トラウマというレンズを通して問題行動を見直す

    8月に買った新刊、「トラウマ・インフオームド・ケアー性加害者に対する治療を変化させる(仮訳)」はなか店舗1なかエキサイティングで示唆に富んだ本です。

  トラウマ・インフオームド・ケアという考え方は、少しとらえ難いところがあります。インフオームドinformedトは、「情報に基づく」とか「 よく理解した上での」という意味で、トラウマ知識に基づいた支援、とかトラウマをよく理解した上でのケア、となります。
  ですから、トラウマ・インフオームド・ケアは冒頭にあるように(p.9)、

トラウマを解消しようとするセラピーと同じではない。

では何かと言えば、
トラウマのレンズを通して問題行動を理解し応答するやり方である。

  問題行動の原因や動機をトラウマに求めるのではありませんし、ましてや言い訳にするのでもありません。性加害だけでなく、さまざまな問題行動をトラウマという観点=レンズから見直し、支援する考え方です。「レンズを通して」という表現はたびたび登場します。

  例えば、怒りをとりだしてみます。トラウマというレンズを通して怒りを見ると、「怒りは認識した脅威に対する反応」(p.19)と理解できることがあります。虐待やいじめを実行したした人や状況を思い起こさせる人や場面が脅威となるかもしれません。

    脅威に対する反応としての怒りは、単なる反撃ではなく、自分の安全がそこなわれそうだという悲鳴に近いもです。「怒りに隠されているのは脆弱性である」店舗2(p.19)。ですから支援者/セラピストとしては、  安全がおびかされていると感じたことと、怒りという反応とのつながりを対象者/クライエントに理解してもらうことが必要になります。

   対象者/クライエントが、自分の安全をおびやかす脅威をすばやくみつけ反応することは重要です。しかし、そのことばかりに注意がむくと自分のまわりで起こっていること、例えば友だちのA君の優しい気持ちやB さんのとげとげしい態度などに気づかず、誤解することだってあるとすれば、対象者/クライエントにとっても周囲にとってもうまくありません。

  安全がおびかされていると感じれば、だれかに援助を求める、その場から立ち去る、理解されるよう主張するなどの選択肢があるにも関わらず、よりによって怒りが選択されました。
  単に、怒りを抑制したり、管理/マネジメントするだけではトラウマ・インフオームド・ケアとは言えません。対象者/クライエントの安全感には全く対処されないからです。  

  トラウマというレンズを通して見ると言うことは、問題行動として指摘し対処するのではなく、トラウマの影響や症状として概念化/見立てたうえで支援すべきだ、との指摘です。
         
Levenson, J. S., Willis. G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care : Transfoming Treatment for People Who Have Sexually Abused. Safer Society Press.       


さて。岐阜県美術館2
  岐阜県美術館で、ナンヤローネ企画のひとつ「BY 80s FOR 20s」を見ました、または体験しました。1980年代が未来2020年に語りかけるもの、がテーマです。http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/index.php展示されている作品はポップで、イラストレーションやグラフィックスなどさまざまな表現があります。特別支援学校などとの共同制作も展示されています。
  美術館でもらったこの企画を対象の岐阜新聞の号外?のインタビューで、横尾忠則がグラフィックスから画家になろうと衝動的に思った時のたとえに静かに爆笑しました。
「ブタが美術館に入ったら、ハムの缶詰になって出てきた」
ニューヨーク近代美術館MoMAでピカソ展を鑑賞中のことだったそうです。                          (ホンダタカシ)

2017/09/16 16:31 | 未分類trackback(0)  | top

ACE質問紙を改良する

  児童期逆境体験ACEをスクリーニングする質問紙を作り試行していますが、より広い観点から検討された質問項目が提案されていたので、TIC TT作り直す作業をしています。

  児童期の逆境体験がその後の人生でどれほどの悪影響を体や心に与えているか調査したのは米国疾病管理予防センターCDCでした(以下、CDCと呼びます)。CDCは、身体的虐待、性的虐待など児童虐待5項目、問題飲酒など家族メンバーのなかへち美術館4問題や母親への暴力も目撃など家族機能不全5項目の合わせて10項目について、18歳前の子ども時代に経験したかどうか、さらに後の心と体の健康状態を
を調査しました。
 
  児童期逆境体験ACEをスクリーニングする質問紙は他にもあります。同じCDCの電話調査を目的とした行動リスク要因調査システムBFFSSやWHOによる児童期逆境体験ー国際版ACE-IQ等があります。

 新たな情報は以下の最新刊(のAppendix)から知りました。
Levenson, J. S., Willis. G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care : Transfoming Treatment for People Who Have Sexually Abused. Safer Society Press.

    この質問紙の項目は、著者の頭文字をつなげてLWP版ACEと呼べば、これはオリジナルのCDC版の10項目に加えて、いくつかの研究成果を元に、いじめ、貧困、地域社会の暴力、差別(不公平・不利な扱い)、施設入所(家庭を離れての養育経験)、医療トラウマ/悲哀/喪失(家族の罹患・受傷)が加えられています。こうした8項目も児童期逆境体験に加えるべきだとの考えです。

 われわれの試行版(ASなかへち1B版)はさら(自然)災害/事故/事件を加えて19項目としました。以下のような質問項目です。
『自然災害((地しんや洪ずい)、大きな交通事故、ひどい事件や火事にあいましたか。またはそんな出来事にあった人を見たことがありますか。TVや写真などをみることは はいりません。』

 児童期逆境体験ACEは子ども時代の体験に限定していますが、身近な家庭だけでなく、なかへち美術館3 地域社会、世界で起こるさまざまな暴力、紛争、葛藤などの出来事の経験が、姿と強さを変えてわれわれに体と心に作用し続けていると言われています。範囲や対象を拡張し、実践使用に向けて試行と修正を繰り返します。

さて。
写真は本文とは全く無関係です。以前にもご紹介した(田辺市立美術館分館)熊野古道なかへち美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/です。田辺インターを降りて、美しい緑の稜線の下をくねくねと曲がる熊野街道(311号線)を走り、中辺路の近露交差点を左折すると、美術館がパッと目に飛び込んできます。大きすぎず小さすぎず、周囲の風景に溶け込みながらも凜として自己主張のある美術館です。その高さが秀逸です。
  建築家妹島和世と西沢立衛の建築ユニット?SANAAによるもので、企画展示もさることながら、美術館も、または美術館こそ鑑賞の対象です。                (ホンダタカシ)

2017/09/01 10:41 | 未分類trackback(0)  | top

二要因レジリエンス・スケールBRSを活用して

  例えば児童期逆境体験ACEなどひどいストレスを伴うとんでもない目に遭った時に、そのストレスに打ちのめされてしまう人がいます。一方で、ストレスは感じながらもなんとかに乗り切っていく人もいます。その違いを説明するもののひとつとして、回復力とも訳されるレジリエンスresilienceがあります。その定義は研究者によって異なりますが、ここではSAMHSA's TICのものを引用します。

海辺
この語は、個人、家族、地域社会、福祉・医療サービス提供者として立ち直り、逆境を乗り越える能力を指す。頑健さという個人の特性以上であって、レジリエンスには困難や逆境、またはそのどちらかの出来事を切り抜けることのできる利用可能な資質の活用プロセスを含まれる。このTIPでは「レジリエンス」という語を適用し、人生全般にわたる個人にとってのプロセスである。(Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57,  p. xⅷ)
  レジリエンスは個人に備わっているものというよらえ方が多いのですが、ここでは個人だけでなく、家族や地域社会にも備わっている能力、ここでは資質resourceとしていますが、この点が注目されます。自然災害を考えれば分かりますが、個人にトンビも家族にも地域社会に対しても過大な影響をもたらし、個人、家族、地域社会がそれぞれがつながりながら乗り越えていきます。

   個人に着目してレジリエンスのを構成する要因を探るスケールがいくつかあります。その一つが「二次元レジリエンス要因尺度(BRS)」(平野真理, 2010)です。
  遺伝的な資質という特性の強い因子である「資質的レジリエンス要因」と後天的に獲得された特性である「獲得的レジリエンス要因」の二次元から構成されます。

  「資質的レジリエンス要因」には社交性、楽観性、自己統制力の各要因からなりますが、自己統制力には不安など感情をコントロールする力と自己意思を実行をコントロールする力の二つからなります。
   「獲得的レジリエンス要因」には、他者理解・自己理解、問題解決指向ガあります。他者理解・自己理解は、双方が関連し合いながら発達すると考えられます。
  先行研究をもとに統計的に解析された結果、7つの要因が取り出されました。
  各要因について3問ずつ質問があり、合計21問用意されています。例えば「社交性」についての一つは、

1.自分のほうから人と親しくなるのが得意だ。

こうしたの質問について、①まったくあてはまらない から⑤よくあてはまる までの5件法で回答し点数化されます。かといって、点数でレジリエンスがあるなしを決めるものではありません。夏の終わり

 いきなりレジリエンスのスケールですと言ってもほとんどの人はご存じないのでその定義を伝えたうえで、「自分の良いところ探し」みたいなもので長所を探します、と説明します。雑に言えば自分のウリ、福祉的に言えばストレングスに気づくことです。

 レジリエンスはストレングスと同じ意味ではありませんが、非常に近い関係にあります。その逆が、多分脆弱性vulnebitity。 強いストレスを経験した人にとって、レジリエンスやストレングスがそこからの離脱や回復surviveする起点になるのではないか、と考えています。

平野真理 (2010). レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成  パーソナリティ研. 19, 94–106.



さて。
鳥が飛んでいるような写真は、実はトンビかタカをイメージした凧で、夜久野高原の葡萄畑上空を旋回?して警戒にあたってます。                 (ホンダタカシ)

2017/08/18 20:05 | 未分類trackback(0)  | top

The Captain Is Out to Lunch and the Sailors Have Taken over the Ship.

ブコウスキー1   チャールズ・ブコウスキーの『死をポケットに入れて』(中川五郎 訳、ロバート・クラム  画、河出文庫)の原タイトルです。「船長は昼食に出かけ、船乗りたちが船を乗っ取ってしまった。」(文庫本p.218)との訳ですが意味が?です。

 1920年8月16日まれのブコウスキーの71歳から73歳までの33の日記です。このタイトルは、『93年2月27日 12:56AM』とある日記の最終章の冒頭の文にあります。それに続く文は脈絡なく、

おもしろくて興味深い人間は、どうしてほとんどいないのか?

と始まって、日常生活を送るのに『まぬけな野郎』と罵倒する人々と交流せざるを得ないと悪態をつき、ページをめくるとクラシック音楽、たぶんマーラーを3、4時間聞いている。映画から作家の話題に転じ、彼らの作品は読むのに苦労する。作家には文体というものがなく、冒険心もなく、精ブコウスキー2気も炎もないとこき下ろし、憤懣、苛立ちをつなぎとして、話題が次々に切り替わります。

 作家としての自分の言葉に勢いがなくなれば、原稿の上にワインを注ぎ、火をつける。屑かごが燃えたら、たっぷりとビールをかける。そのあげく、届いた読者?からの手紙に毒づいて、
  ・・・それにわたしはトルストイだって嫌いだ!

でこの章、つまりこの日記は終わります。日記? 文を書く自分を丹念に虫眼鏡でみている自分をブコウスキーが実況中継しているように思えます。
クラシック音楽、葉巻、コンピューターが、文章を踊らせ、わめかせ、大声で笑わせてくれる。悪夢の人生もまた手助けしてくれる。

 邦題はヘミングウエイに始まる91年9月12日11:19AMの日記(p.20)のなかで、死に対する用意ができていない人が多いけれど、私は『死を左のポケットに入れて』、ときブコウスキー4には取り出して話しかける。
 「やあ、ベイビー、どうしてる? いつわたしのもとにやってきてくれるかな? ちゃんと心構えしておくからね」

 71歳のちゃめっ気。
 タイトルにあるOut to Lunchには「酒・麻薬で〕正気を失った」という別の意味ももあります(英辞郎o on the web)。船長はブコウスキー自身だとしたら船乗りたちって誰のこと?振り落とされないように必死で安全バーをつかんで読む日記です。なかなかやめられない。

 はじめてブコウスキーを読んだのは柴田元幸 訳『パルプ』(ちくま文庫)です。文庫本腰巻きにあるとおり、私立探偵ビレーンが一人で立ち回るの傑作怪作です。探偵小説だと思って読むとぶっ飛びます。依頼人には女死神やら美女宇宙人やら。この暑さなんてなんのその。
 つぎは、藤原新也のカバー写真が魅力的な、青野聰 訳『町でいちばんの美女』(新潮文庫)です。         (ホンダタカシ)




2017/08/04 19:21 | 未分類trackback(0)  | top

PTSDチェックリスト(PCL)

  児童期逆境体験(ACE)のスクリーニングを行った結果ある項目が該当した時、つまり陽性であった場合、次の段階であるアセスメントに移行します。

 これまでの各分野のアセスメント結果や生活歴、支援の経過などの見直しが必要になりスーパー ます。これまで明らかにならなかったけれど、子ども時代にトラウマ症状をもたらす体験があったかもしれない、との観点で見直します。これだけでも大変な作業です。対象者はだれにも気づかれないままに、その症状や障害で困っている状態が続いているので、そんなに時間をかけてよいものでもありません。

  欠かせないのが、PTSD症状があるかないか、あるとすればどの程度かのチェックです。そのチェックをするツールとして「PTSDチェックリスト(PCL)」を選びました。SAMHSAのTrauma-Informed Care in Behavioral Health Services. TIP 57のp.108-110に紹介されています。このリストもスクリーニングのためのツールで、これだけではPTSDの診断は出来ず、あくまで補助的なツールです。

 DSM-5にあわせた最新版は、National Center for PTSDhttps://www.ptsd.va.gov/から得ました。ここはU.S.Department of Veterans Affairs(退役した軍人やその家族を対象とした政府機関)の一部門のようです。PTSDの研究がベトナム戦争をきっかけに進んだことと無縁ではありません。
 
 IES-R (Impact of Event Scale-Revised) など日本において標準化されたスケールもありますが、知的障害者への適用も考えると表現などに工夫が必要なので、The PTSD Checklist for DSM-5(PCL-5, 14 Aug. 2013) を平易で分かりやすくなるよう訳しています。正確さを確実にするた旗めには逆翻訳が必要ですが、そこまではなかなか。

 このチェックリストの教示は以下のように始まります。
   Below is a list of problems that people sometimes have in response to a very stressful experience.
  「これは問題のリストです。ストレスのたいへん強い経験をした人に ときどきある反応です」

 こういった具合で訳します。関係代名詞thatを入れて訳すと、文の構造が複雑になり理解を妨げるおそれがあるので、2つの文に分けて訳しました。
 問題は、very stressful experienceです。直訳の「たいへんストレスの多い経験」では心的外傷をもたらすほどの大変さが伝わりにくい。今のところ、下線部のようにしました。これでもまだしっくりきません。

 教示はさらに「この一月間、その問題にどれくらい悩まされたか、あてはまる番号を丸でかこんでください。」と続きます。「悩んだか」でもいいように思いますが、原著も英文法でいうところの現在完了形の受動態です。「高卒後の進路について悩んだ」のように主体的に悩んだわけではなく、主体は「あなた」でありながらも、トラウマをもたらすようなストレスのたいへん強い経験に対しては受け身でしかなかった、との意味かと思います。

 他にも悩む箇所はいくつかありまた。正確で、平易で、分かりやすい飜訳は難しい。
 本文と写真は全く無関係です。       (ホンダタカシ)

2017/07/21 17:49 | 未分類trackback(0)  | top

田辺市美術館など

 「熊谷守一 書と絵と肖像」展を見るために田辺市美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/bijutsukan/へ行きました。熊谷守一を見るの田辺市美術館1 は3回目でしたが、今回はタイトルにあるように書と写真が多いのが特徴です。装飾のようにもみえる単純化され平板化された油絵とは違って、ダイナミックさは同じですが濃淡が強いのが印象的な書です。知っているけれどみたことがない字、読めない字だけれどこれじゃないかと思える言葉です。

 美術館は折り紙で作った箱をいくつかつなぎ合わせたようにみえる建物です。裏から見るととても美術館には見えないけれど、じゃ何かと問われると困ってしまうような建物です。豊島区立熊谷守一美術館http://kumagai-morikazu.jp/、熊谷守一つけち記念館http://www.morikazu-museum-tsukechi.jp/に比べると、公立ですが建物の個性が際立つ美術館です。ドアの取っ手の意匠が目を引きますが、館内はいたってオーソドックスです。
田辺市美術館2
 この美術館の分館である熊野古道なかへち美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/index.htmlも魅力的です。紀伊半島のほぼ中央です。金沢21世紀美術館を手が岐阜県美術館けたSANAA(妹島和世と西沢立衛による建築ユニット)の最初の美術館だそうです。

 館内にあった美術館のパンフレットはどれも楽しいものです。  「ナンヤローネ」と題した岐阜県美術館http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/のパンフレットは月ごとに司令のかかれた楽しい月めくり式の催し物案内です。
 7月の司令は「日本画の逆襲を目撃しよう。」難しいなあ日本画は、という感想を追い出すような司令です。8月は「熊谷守一を『モリカズ』と呼ぼう。」です。熊谷守一は結構人気ですね、お名前を呼び捨てにするのは畏れ多い。
 月ごとにいくつかの展示が案内されていますが、右端にMEMOとあり画家の誕生日が載っています。今日7月7日は七夕などではなく、シャガールの誕生日!

 館長さんは日比野克彦!とあります。ここも期待できそうです。このパンフレットのデザインもひょっとしたら・・・。      (ホンダタカシ)

2017/07/07 09:59 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマのスクリーニング

暗がり2  なぜ性問題行動、性加害行動のある人を対象にトラウマのスクリーニングをするのか。「トラウマに暴露することはありふれたことである」(SAMHSA's TIC, 2014, p.112)からです。以前ここでも、また授業でもご紹介したことがありますが、各種調査の対象者の多くに、トラウマの履歴があったことが示されています。蔓延してると表現するものもあります。

 心理的社会的な課題のある人に対してなんらかの支援やアプローチをするときに、トラウマに関連した症状や障害を知らないままであれば、対象者に対する理解は不完全であるばかりか誤ることさえあります。支援やセラピーは効果を上げにくくなり、トラウマ関連障害を憎悪しかねないとも限りません。

 スクリーニングのツールとして着目しているのが、児童期逆境体験Adverse Childhood Experience (ACE) 質問紙です。現在、既存のACE質問紙を組みあわせ、児童虐待、家庭機能不全にいじめ体験も加え、分かりやすくしたものを作成中です。
 ACE質問紙でスクリーニングすれば終わりというものではありません。スクリーニングで陽性であれば、これまでの記録やアセスメント結果を再点検し、トラウマ関連症状・障害や合併症のアセスメントの段階にはいります。
暗がり1
 スクリーニングではトラウマに関連することだけを探索するのが目的ではありません。その最後は、対象者のストレングス、レジリエンスの確認が必要です。SAMHSA's TICではレジリエンスこのように説明されます。

「個人、家族、地域社会として、立ち直る能力や逆境を乗り越える能力を指す。頑健さという個人の特性以上であって、レジリエンスには困難や逆境、またはどちらかの出来事を切り抜けることのできる利用可能な資質の活用プロセスが含まれる(以下略)」(p. xviii)
 トラウマ・インフォームド・ケアTICは対象者のストレングスに着目しているところから、そのスクリーニングも欠かせません。この冊子にも紹介されていますが、日本で研究されているレジリエンス・スケールがいくつかあります。その活用も検討しています。いずれご紹介します。
SAMHSA's TIC;Substance Abuse and Mental Health Services Administration Center for Substance Abuse Treatment (2014)  A TREATMENT IMPROVEMENT PROTOCOL Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services. TIP 57. (U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES)  (米国物質乱用・精神保健サービス局(2014) 治療改善実施要領:行動面の健康におけるトラウマ・インフォームド・ケア:57のヒント」 あまりに長いのでSAMHSA's TICと略しました)

さて。Sax_20170624175414b82.jpg
最近、サックスの練習に行くと先生からほめてもらえることが増えました。『これは去年のホンダさんには絶対できひん曲やな』と先生はおっしゃいます。うれしいけれど、去年は、ということは最近までそんなにもひどかったのか、と複雑な思いが浮かびます。ほめてもらえたので、よしとしよう。       (ホンダタカシ)

2017/06/23 09:54 | 未分類trackback(0)  | top

性別を問う

 メーカーがすでに買収されたのに買ってしまったペブルウオッチPebble Watchです。iPhoneと連動して動きます。pebble.jpg この時計には歩数や睡眠時間!を管理するPebble Healthというアプリがあり、iPhone上から年齢、身長、体重、性別など使用者の基本情報を入力しまする。
 このPebble Healthというアプリでは、性別の選択肢は写真の画面にあるように「男性male」、「女性female」、「その他other」の3つ あります。

 先日、市民を対象にした行政が実施する調査アンケートについて、男性女性という二者択一であることに再考を促す意見を聞きました。鋭い問題提起であったと思います。

  性別を問うているのは、必ずしも生物学的性だけを対象にしたものではありません。自分の性をどのように認識しているか、つまり性自認をも対象にしています。性(別)は、生物学的な面やジェンダーだけではとらえず、性自認、さらに性指向なども含めて多面的にとらえる流れです。
Pebble_Health.jpg
 「その他other」という選択肢が最適かと言えば、難しいところです。
 性別の選択は各種の申請書、調査やアンケートなどに限らず、例えば、なくては困るトイレの表示にまで及びます。どのように考え合意にいたるか、まだまだ広範な議論が必要ですが、時代は進んでいます。これまでのように男性女性の二者択一しかないというは固定的過ぎるのかもしれません。


  さて。
 このペブルウオッチにはPebble Healthというアプリと連動して、歩数計や睡眠(熟睡)時間を計る?機能もついています。この時計を自慢すると、器械に健康管理されるのは嫌だという反応が必ず返ってきます。でも目覚まし時計と同じで人の機能の拡張です。今日は11,000歩でした。
(ホンダタカシ)


2017/06/09 19:01 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマ・サバイバー

  前回にも触れた米国物質乱用・精神保健サービス局の「治療改善実施要領:行動面の健康におけるトラウマ・インフォームド・ケア:57のヒント」(仮訳) のはじめの方に術語集Terminologyというページがあり、専門用語がいくつか解説されています。
 その最後に、trauma survivor(トラウマ サバイバー)が載っています。その考え方はこうです。


 この語句はトラウマを経験した、またはトラウマのストレスへの反応がある人を指すことがある。言葉や語の使用がリカバリーを方向付けたり、再トラウマ化の進行の一因となることがあるということを理解し、「被害者」という語を避け、その代わりに適切な場合にはsurvivor(サバイバー)という語を使用し、希望のメッセージを提案することが本書の意図である。

 survivorはvictimをならんで使用されることもありますが、本書ではsurvivorのみが使浜野球用されています。victimは「犠牲(者)」ですが、survivorは「生き残った人、生存者」と辞書にあるものの、「トラウマ後に生き残った者」ではニュアンスが異なり、かといって「回復者」では意訳が過ぎるので、一般には原語のまま「サバイバー」と訳されています。.

 ジュディス・L・ハーマンの「心的外傷と回復」を訳された中井久夫先生は、巻末の「訳語ノート」でsurvivorについてこう書かれています。
survivorは元来「その後に生きる者」の意味で、「その後」とは一般に厄災的なことである。十七世紀における英語の初出は、「アダムとイヴ(の楽園追放)の後に生きる者」の意味である。

 「心的外傷と回復」では八割を「被害経験者」か「生存者」にしたとあります。例えば、ホロコーストでは「被害経験者」ではしっくりこない。また「被害者」は被害から被害から時計時間・心理時間のいずれもがあまり経過していない場合で、「被害経験者」は被害から時間が経っている場合に当てられています。さらに「児童虐待経験者」ではあるが、大人になっている場合には「その後を生きる者」と強調されています。

 原著を読み込んで、字義を超えて時間経過までを込めた訳語の選択は思いもよらないことでした。中井先生の指摘にそえば、われわれが対象とする児童期逆境体験ACEの経験者は、成人が児童期を回想したものなので「被害経験者」よりは「その後を生きる者」が近いものかもしれません。そのうえ、原著では「希望のメッセージ」を提案したいとの意図があります。それならば、一般的に使用されているサバイバーよりも、より人間に近い「その後を生きる者」がしっくりくる気がします。訳語が当てにくいとはいえ、サバイバーではあまりに安直かもしれません。ここでは、少し生硬な印象はありますがtrauma survivorを「トラウマ後を生きる者」としました。
Herman, J. L.(1992). Trauma and Recovery . Harper Collins Publisher, Inc. (中井久夫(訳)小西聖子(解説)(1996). 心的外傷と回復 みすず書房)
       (ホンダタカシ)

2017/05/26 14:15 | 未分類trackback(0)  | top

グラウンディング・テクニック

観覧車  米国物質乱用・精神保健サービス局の「治療改善実施要領:行動面の健康におけるトラウマ・インフォームド・ケア:57のヒント」(仮訳) の第4章に、「グラウンディング・テクニック」が紹介されています。

 虐待などつらかった不快な体験(逆境体験、トラウマ体験)によるさまざまな影響や障害などをスクリーニング、あるいはアセスメントする際に、調査対象となった人(クライエント)が思い起こした記憶やその時の強い感情に圧倒され、混乱することがあります。面接している時にも起こることがあります。そうした時に面接者がクライエントに行う対処方法の一つが「グラウンディング・テクニック」です。

 (過去の)トラウマに関連して混乱したり解離などが起こったのであれば、対象となる人(クライエント)に「いま、ここ」を強く意識させ、現実感とその感情を確認させる必要があります。それは、あたかも映画館の中で心の映画を見ているようなものといえます。そうであれば、映画館を出て陽のさす場所=現在の環境の中へへ出よう、という比喩で説明します。同時に、ここは安全で安心できる場所であることも必ず説明します。

 自分の位置かにを確認し自分を取り戻すエクササイズとして行われるのは、例えば、

  ・壁にかかっているものを言う・赤いものの名前を言う
  ・今日の日付・最近の出来事を言う
  ・こぶしを握って感情のエネルギーをそこに移し替える
  ・鼻から吸って口から吐き出す深呼吸  など。
 グラウンディングgroudingは「自分を見失わないこと」(ルミナス英和辞典 研究社)とあり、地に足をつけて自分=現実を見失わないこととの意味ですが、訳しにくいので安直ですがカタカナ読みのままです。
 逆境を体験した人と関わる支援者や面接者には身についておくべき基本的な技法です。
 
A TREATMENT IMPROVEMENT PROTOCOL Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57(2014). Substance Abuse and Mental Health Services Administration Center for Substance Abuse Treatment (U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES). p.98. Retrieved from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK207201/ (May 14, 2017)
きむら
【参考】Melnick, S. M., & Ellen L. Bassuk, E. L.(2000). Identifying and Responding to Domestic Violence Among Poor  and Homeless Women.  A collaboration of the Better Homes Fund, HCH Clinicians’ Network Research Committee (National Health Care for the Homeless Council). p.8. Retrieved from https://www.nhchc.org/wp-content/uploads/2012/02/IdentifyingRespondingtoDomesticViolence_2000.pdf (May 14, 2017)

 さて。
 自伝を書くほどの歳でもないだろうと思ったけれど、「木村充輝自伝ー憂歌団の僕、いまのぼくー」(K&Bパブリッシャ−ズ)を図書館で借りました。憂歌団のほとんどの曲がそうであるように、大阪弁をブルースにのせること、たとえ外国の歌であっても日本語で歌うこと、その軌跡が自伝の形で語られます。もちろん、それだけではありませんが。憂歌団という名前だってブルース・バンドの日本語訳。   (ホンダタカシ)

2017/05/14 10:07 | 未分類trackback(0)  | top

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