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「フイラデルフイア都市部児童期逆境体験調査結果(2013)」もスクリーニング項目に追加された

 これまでの児童期逆境体験ACEsの研究は、どちらかといえば、白人、中産階級、高学歴の個人を対象とした調査研究でした。しかし、もっと多様な人々に対して同じような調査を行うと同じような結果が出るだろうか。こうした疑問から、「フイラデルフイア都市部児童期逆境体験調査結果」Findings from the Philadelphia Urban Ace Survey」(2013)が実施されました。「安心安全な家族研究所」The Institute for Safe Families(ISF)による調査です(https://www.rwjf.org/en/library/research/2013/09/findings-from-the-philadelphia-urban-ace-survey.html)。身体的、心理的、性的虐待や家庭機能不全などの児童期逆境体験が、成人期の健康行動や健康転帰にどれほど悪影響を及ぼすか、という目的は同じです。

 この調査報告書の表1(p.2)、表2(p.4)から、調査対象の分布の一部を抜き書きします。最初のCDCによるカイザー研究(The Kaiser Study; Felitte, et al.,1998)、このフイラデルフイアの都市部調査樹 、さらにフイラデルフイア在住者について、18歳以上の調査対象者の人種や学歴の比率を比較します。ただし、サンプル数はかなり異なります。

 カイザー研究(CDC)  白人74.8% アフリカ系(黒人)    4.6% アジア系 7.2%
   フイラデルフイア調査  白人44.1% アフリカ系(黒人) 42.5% アジア系 3.6%
   フイラデルフイア在住者 白人38.8% アフリカ系(黒人) 36.1% アジア系 6.2%

 カイザー研究(CDC)   高卒前  7.2%  高卒17.6%  大卒または以上39.3%
   フイラデルフイア調査   高卒前10.3%  高卒31.4%  大卒または以上35.7%
 フイラデルフイア在住者  高卒前20.0%  高卒35.7%  大卒または以上22.5%

 この比較をみるとカイザー研究(CDC)は、やや偏りがある可能性があります。より多様な対象者を想定すれば、調査する項目の内容も多様化すべきではないかと考え、フイラデルフイアの都市部調査ではさらに項目が追加されました。カイザー研究(CDC)は以下の①から⑩の項目でしたが、フインケルホーらの研究で⑪から⑭が追加されました。

①心理的虐待
②身体的虐待
③性的虐待
④心理的ネグレクト
⑤身体的ネグレクト
⑥両親の不和(離婚、別居)
⑦母親への暴力の暴露
⑧家族の問題飲酒、違法薬物/物質の使用・乱用
⑨家族の精神疾患、自殺の試み
⑩家族の刑事施設収監
⑪いじめ(きょうだいを含む仲間や友人からの身体への暴力や言葉の暴力被害)
⑫いじめ(仲間や友人からの孤立、拒否)
⑬危険な地域社会での居住、暴力の暴露
⑭貧困
⑮差別
⑯社会的養護

 「フイラデルフイア都市部児童期逆境体験調査」ではさらに⑮人種や民族による差別、⑯社会的養護が加えられました。⑯はfoster care(里親)ですが、児童施設をも含む社会的養護としました。フイラデルフイア都市部研究の⑪と⑬は少々変更されました。⑪はイジメとあった表現から内容が詳しくなり、⑬は「近所で安全だと感じた/近所の人たちは、お互いに気を配り、お互いのために立ち上がって、信頼される」からより危険さが強調される表現に変更されました。

 フイラデルフイア都市部研究で変更されたアンケート項目の回答率をみると、⑬暴力の暴露(40.5%)、⑮差別の経験(34.5%)、⑬危険な地域社会での居住(28%)、いじめ(7.9%)、里親/社会的養護(2.4%)でした。高い率を示している項目が目に付きます。差別や暴力の暴露(暴力を目撃すること)など地域社会に関連したストレス要因や有害性にも着目し、サービスや施策の必要性を論議しています。

辞典
  閑話休題。原稿を手直しするために、小内一(2015)「てにをは連想表現辞典」(三省堂)を買いました。かなり個性的な辞典です。
 文章表現するときの連想の輪を広げるために、作家による22万の用例が載っています。例えば、「泣く・涙ぐむ」の項(この辞典ではグループと呼ぶ)では、嬉し泣き、大粒の涙に始まって、男泣き、めそめそまで32語(見出しと呼ぶ)ならんでおり、その一語一語に表現例がついています。
 類語辞典やコロケーション辞典(二語以上の慣用的つながり方)のようにもみえますが、用例の豊富さがケタ違いに多いので、読んでいて面白く、どの単語を選ぶか、こう書こうか、など表現のアイデアが浮かびます。箱のイラストはことばの海を泳ぐクジラです。
     (ホンダタカシ)



2021/03/16 17:54 | 未分類trackback(0)  | top

フインケルホー Finkelhor(2015)は児童期逆境体験ACEsに新たな項目を追加した

  児童期逆境体験ACEsのそれぞれの項目が、その後の身体面や心理面の健康にどのような影響をもたらすかを検討することを目的に始まりました。心臓病や肝臓病、うつ病などさまざまな疾患などとの関連性です。
 はじめの項目は以下の10項目でしたが,
ジャングルジム

①心理的虐待
②身体的虐待
③性的虐待
④心理的ネグレクト
⑤身体的ネグレクト
⑥両親の不和(離婚、別居)
⑦母親への暴力の暴露
⑧家族の問題飲酒、違法薬物/物質の使用・乱用
⑨家族の精神疾患、自殺の試み
⑩家族の刑事施設収監

 フインケルホーらFinkelhor(2015)の研究では、子どもの発達に悪影響を及ぼすのはこれらだけでは不十分ではないかと考えました。これまでの研究成果を検討して、仲間や友人との関係における暴力的ないじめ、あるいは無視や拒否などの心理的なイジメ,さらに家庭の経済状況、近隣や地域社会の状況なども項目に含めれば、心身との健康との関係をより明確にできるのではないかと考えました

 いじめ、仲間や友人からの拒絶や孤立は、上の①から⑩のような家庭の要因とは別ですが,子どもの発達に強く影響するはずです。社会的経済的問題は健康に対して直接,間接に影響を及ぼす可能性があります。
 フインケルホーらの研究では、10~17歳の未成年者1,949人調査が、電話で調査されました。年齢階層、性別、人種/民族、保護者の状況など偏りを重みづけされました。
 その結果、以下の⑪から⑭は身体的・精神的健康問題の重要な予測因子であることが裏付けられました。
⑪いじめ(きょうだいを含む仲間や友人からの身体への暴力や言葉の暴力被害)
⑫いじめ(仲間や友人からの孤立、拒否)
⑬危険な地域社会での居住、暴力の暴露
⑭貧困

 児童期逆境体験ACEsの項目はあわせて14になりました。ただ、それぞれの項目内容は質的にもかなり異なっており、身体的健康や精神的健康に影響及ぼす経路もまた異なっているのではないかと示唆されています。いわゆる虐待だけでなく、広く子どもの生活環境を視野に入れる必要性を訴えています。


 閑話休題。
 神戸や大波阪で干物といえば、鰯、鯵、鯖、鰈あたりですが、舌平目(ウシノシタ)も見かけることがあります。和歌山へいくと太刀魚、アイゴが加わります。アイゴはほんのり嗅ぐ磯臭さが魅力です。さらに南下するとウツボにも出会います。
 尾鷲あたりまで行くと、魚体を見たこともないシイラやマンボウ!の干物があります。シイラの干物は口に入れた時の身のほぐれ方が鯵や鯖と違ってこまかい感じです。マンボウの「こわた」を干物にします。「こわた」のとは消化管(腸?)のことだそうで、ホルモンのミノに似たこりこりとして繊維を感じる歯触りで、ほど良い塩味が大変おいしい逸品です。
         (ホンダタカシ)

2021/03/07 05:35 | 未分類trackback(0)  | top

ACEsスクリーニングの性虐待項目はワイアットWyatt(1985)の研究を参考にした

 前回の児童期逆境体験ACEsスクリーニング項目の検討を続けます。19の項目のそれぞれに解説をつけることが目的です。原稿の量をあまり増やすことのないように、との指示があるので簡単な加筆にとどめようと思います。
 前回は最初の10項目の元になった研究をご紹介しました。このなかで課題となったのは、性虐待/性暴力被害に関する項目についてです。

 スクリーニングは成人を対象としているので、はじめにこのように尋ねます。回答の仕方についてです。ルビは省略しています。

「あなたが18歳になるまでの、子どもの時の体験と家庭生活について、すこし教えてください。「はい」「いいえ」のどちらかに○をつけてください。」
雨  それぞれの項目はこのように示されます。
「3) 大人、またはあなたよりも5歳以上うえの人が、あなたにさわる、なでまわす、またはあなたにその人のからだを性的タッチさせたことが、一度でもありましたか。
または、その人が、あなたと口や肛門によるセックス、性交をしようとした、あるいは実際にしたことが一度でもありましたか。 はい・いいえ」

 
 この項目の元となったワイアットの研究にそって説明します(Wyatt, 1985)。
 「加害者の年齢」と「被害者の関わろうとする意思」に応じて虐待とみなすかどうかが決まるという考え方です。 

 虐待者/加害者は大人、または当時の回答者の年齢より5歳以上の者としています。
 被害者である子どもの観点からすると、18歳以下の子どもが自分より5歳も上の年長者に対して「拒否したいという意思」を表明するのが極めて難しいことが考えられます。直面している性的行為に関わりくないという意思、拒否したいという気持ちがあることは重要です。おどしや暴力がともなっていてもいなくても。

 また、年齢差5歳については、このスクリーニングができたアメリカでは州によって異なりますが、この年齢差を性犯罪の要件のひとつとしていることによるかと思います。
 
 では、4歳以下の年齢差ならどうか。やはり重要なのは、被害者本人の意思や気持ちです。その子ども(被害者)に関わりたくない、あるいは関わりたくなかった/嫌だったという意思や気持ちがあれば、年齢差が4歳であってもその経験は虐待と見なします。

 被害者が12歳以下であれば、「子どもは自分が何に同意しているのかを理解しておらず、権威者にノーと言う自由がない」(Wyatt, 1985, p.511)という理由で虐待として見なすべきだと思います。


 「関わろうとする意思」は見方を変えれば、いわゆる「同意」ともいえます。かって私たちが翻訳刊行した性問題行動を対象としたワークブック「フットプリント」では、同意について、以下のように説明し理解するよう求めます。ルビは省略しています。(Hansen & Kahn,  2012 本多・伊庭 2015, pp.54-55)
1.パートナーは、あなたの年齢とおなじくらいでなければいけません。
2.パートナーは、これからおこることを、きちんとわかっていなければなりません。
3.パートナーは、「いや」といえる権利を、かならずもっています。
4.パートナーが、「いいよ」といわなければいけません。
 

 このスクリーニングの性虐待は、児童虐待と性犯罪にまたがったとらえかたをしています。したがって、日本の児童虐待についての見方とはかなり異なっています。一方で,司法の領域では性犯罪に対する検討としてさまざまに議論されています。(性暴力と刑事司法(2014);法務省HPなど)
 なおこの項目の内容には、見せつける、とか暴露するという接触のない性虐待/性暴力被害が含まれていません。この点は課題です。


 ワイアットは、アフロアメリカ人女性と白人アメリカ人女性の児童期の性虐待について、ロサンぜルスでインタビュー調査を行いました。それぞれの18~36 歳を対象に、人口比、学歴、配偶者や子どもの有無などの影響が出ないようサンプリングされました。実際にはアフロ・アメリカ人女性126人、白人アメリカ人女性122人が対象になり、そのうちの前者では57%、後者では67%に虐待被害が認められました。ただし、統計上の有意差は認められませんでした。

 加害者、加害者との関係、場所など興味深い結果が多数報告されていますが、そのなかで目がとまったのは、
白人アメリカ人女性は幼児期(6~8年)に、一方アフロ系アメリカ人女性は思春期前(9~12年)に虐待が多かったこと、加害者からの被害者への心理的な強要があったのは約10%に過ぎないこと。残りの15%は加害者がゲームとみせかけて始まり虐待に至ったものだったこと、などです。



DL103.jpeg MCカートリッジを買ったので、中古レコード店に行くことが多くなりました。古いビルの二階や奥にある店は、入り口から主役はオレだといわんばかりにレコードが山のように積まれています。店のなかでは横ばい歩きしかできず、レコードの品定めに夢中なお客もいらっしすれ違うのは至難です。昔のジャズ喫茶に似た一途な匂いが漂っています。理由ははっきりしませんが男性客ばかりです。

項目の翻訳は以下;
(研究代表者)(2016) 児童虐待の被害を測定する国際的調査票の日本語版の作成 科学研究費助成事業  研究成果報告書 Retrieved from  https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790625/ (January 9, 2018)(著者の承諾を得て一部改変)

Wyatt, G. E. (1985). The Sexual Abuse of Afro-American and White-American Women in Childhood. Child Abuse & Neglect. Vol. 9, Issue 4, 1985, Pages 507-519.

Hansen, K. & Kahn, T.J. (2012).  Footprints: Steps to a Healthy Life. Second Edition. Safer Society Foundation, Inc
(ハンセン, K・カーン, T. J.  本多隆司・伊庭千惠(監訳)(2015).  性問題行動のある知的障害者のための16ステップ:「フットプリント」心理教育ワークブック第2版 明石書店)

大阪弁護士会人権擁護委員会 性暴力被害検討プロジェクトチーム(2014) 性暴力と刑事司法 信山社

法務省 性犯罪に関する刑事法検討会  Retrieved from http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00020.html (Mar. 1, 2021)
 
        (ホンダタカシ)


2021/03/04 07:27 | 未分類trackback(0)  | top

ACEsスクリーニングの原型になったFelitteら(1998)の児童期逆境体験の研究

 1年ほどの空白がありましたが、ブログを再びはじめます。


 出版予定のトラウマについての心理教育教材『キックスタート』の編集が始まりました。加筆や修正が必要です。その作業をご紹介します。
  まず取りかかったのは、『キックスタート』の使用にさきだって行う児童期逆境体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)のスクリーニング調査表をもう少し詳しく説明することです。
  このスクリーニングは、トラウマをもたらすような被害の出来事を18歳以前に体験したかどうかをチェックします。調査対象の多くは成人であって、どのような項目を設けるか、その質問項目の意図は何か、それが重要です。


  そのリストは、レベンソン・ウイリス・プレスコット(Levenson, Willis & Prescott, 2017)「トラウマ・インフォームド・ケア」の巻末の資料(Appendix A)です。全部で18項目あります。実際のスクリーニング項目はわたしたちが1項目を追加し全19項目です。


  レベンソンらの18項目はいくつかの研究から採られたものです。最初の数項目は、フエリッテイFellittiら(1998)の研究がもとになっています。それが、米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)ーKaiser Permanentteの研究になりました。https://www.cdc.gov/violenceprevention/aces/about.html?CDC_AA_refVal=https%3A%2FFelitti.jpg%2Fwww.cdc.gov%2Fviolenceprevention%2Facestudy%2Fabout.htmlこれをご紹介します。
 Fellittiら研究では、18歳以前に体験した児童虐待など逆境体験がその後の成人期の心身の健康に悪影響をおよぼしているのではないか考え、13,000人余りを調査しました。調査では、児童期逆境体験についてのアンケートと健康状態や健康問題が対象になりました。それぞれのアンケート項目は先行研究から採られました。


  Fellittiら研究での調査は、児童期逆境体験の調査は児童虐待と家庭機能不全から成っています。児童虐待は、心理的虐待(2 問)、身体的虐待(2 問)、接触のある性的虐待(4 問)の 3 カテゴリー/8項目あります。
 家庭機能不全とは家族の薬物乱用(2問)、家族の精神疾患(2問)、母親や継母への暴力的な扱い(4問)、家族の収監歴(1問)の4カテゴリー/9項目からなっています。ここでいう家族とは同居している家族メンバーを指しており、子ども時代にそうした家族メンバーと住んでいたか、または目撃した(暴露された)か問います。

 児童虐待と家庭機能不全の2領域において、あわせて7カテゴリー/17項目です。各項目についてハイ−イイエで答えます。この研究ではどの項目に回答したかではなく、どのカテイゴリーに対してかが焦点があります。例えば、性虐待では4項目ありますが、ひとつでもハイであればそのカテイゴリーにハイがあったとします。この調査は、性虐待、母親などへの暴力的扱いの項目が多いのが特徴です。

  
 Fellittiら研究があり、CDC-Kaiser研究では、児童虐待では心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、心理的ネグレクト、身体的ネグレクトの5項目、家庭機能不全では、母親への暴力の暴露、家族の物質乱用、家族の精神疾患、離婚や別居、家族メンバーの収監の5項目、あわせて10問にまとめられました。エリッテイら(1998)の研究と比較するとネグレクト(2項目)、離婚や別居が加えられています。

 この10項目の質問は英語ですが、米国家庭裁判所(?と訳せばいいのでしょうか The National Council of Juvenile and Family Court Judges:NCJFCJ)のリンク 「あなたのACEスコアは?」(Finding Your ACE Score)にあります。https://www.ncjfcj.org/wp-content/uploads/2006/10/Finding-Your-Ace-Score.pdf


 Fellittiら研究結果では、児童期逆境体験ACEsdのなかで最も高率で見られたものは、物質乱用25.6%で、以下性的虐待22.0%、家族メンバーの精神疾患18.8%でした。健康リスク要因である喫煙、重度の肥満、運動不足、抑うつ気分、および自殺企図については、児童期での暴露のカテゴリー数が増加するにつれて増加しています。
   
 児童期逆境体験ACEsは児童期の心身の健康や福祉に有害であるというだけでなく、その後の成人期の広い意味での健康に悪影響を及ぼすことが指摘され、注目されるようになりました。

ajillo.jpg
 閑話休題。
    JALクー ポンでオホーツクビールと紋別アヒージョのセットをたのみました。届いたアヒージョの箱を開けると北海道紋別高等養護学校の小さなパンフレットが入っていました。学校では缶詰の箱詰めが行われ、アヒージョの香辛料であるトーガラシの栽培も手がけということです。おいしくいただきました。


Levenson, J. S., Willis, G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care Transfoming. Treatment for People Who Have Sexually Abused. SaferSociety Press.

Felitti, V. J. , Anda,R. F., Nordenberg, D., Williamson, D F., Spitz, A. M., Edwards, V.,  Koss, M. P., & Marks, J. S.(1998). Relationship of Childhood Abuse and Household Dysfunction to Many of the Leading Causes of Death in Adults. The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. American J. of Preventive Medicine. Vol.14, Issue 4, 245-258

    ホンダタカシ

2021/02/18 20:00 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマについての心理教育教材『キックスタート』その2


 知的障害者などを対象とした心理教育の教材、『キックスタート,トラウマを支援者と理解する』の概要をお知らせします。支援者が『キックスタート』のよる心理教育を受ける時は,トラウマについて始めて説明される機会、フアースト・コンタクトです。同時に、説明する側の支援者も始めての経験かも知れません。
  そこで次のような三つの構成にしました。
  (1) トラウマについて  
  (2) トラウマの影響  
  (3) トラウマに取りくむ 
虎馬3
 「(1) トラウマについて」では、トラウマについて説明します。ここでのポイントは、トラウマの定義ではなく、被害にあったのはその人のせいではない、トラウマをもたらすほどの脅威があなたの”力”をうばったということを伝えることです。
 その人の考え方/認知、からだの調子、気もちや感情、行動に対するトラウマの影響を(2)で説明します。よく見られる影響として、認知,フラッシュバック、解離をとりあげます。また、それらがおこるきっかけをがあること、被害を思い出した時の嫌な気持ちや不快感に対処しようとし問題行動に頼ることがあることを指摘します。
 最後に「(3)トラウマに取りくむ」として安全をキイワードとしたトラウマ対処法を三つ取り上げます。対処法はただ実行すればそれだけでうまくいくものとは限りません。
 「リカバリーはできる」で締めくくります。リカバリーは回復と訳されますが,必ずしもトラウマ症状等の減少や緩和だけを意味するものではなく、またトラウマ前の状態に戻ることを意味するものでもありません。リカバリーは友だちなどさまざまな人たちとの交流のなかにあります。                    (ホンダタカシ)

2019/12/29 15:14 | 未分類trackback(0)  | top

『キックスタート,トラウマを理解する』

 このページも長らくお休みしていましたが再開します。 


 以前に、トラウマについての心理教育のための教材を作っているとお伝えしましたが、ようやくかたちが整いました。『キックスタート,トラウマを理解する』というタイトルです。あわせて、この『キックスタート』と昨年のスクリーニングのための『児童期逆境体験ACE質問紙』のマニュアルも作成中です。『キックスタート 』、『児童虎馬2期逆境体験ACE質問紙』とともに知的障害のある人をも対象としています。

  『キックスタート 』を使った心理教育とは、トラウマに暴露した結果、トラウマのストレス、トラウマに関連した症状や問題について情報を提供することです。トラウマとその体験、影響に関して対象者が正しく理解することが目的です。理解することは今ある症状や問題を通常なものに戻すことにつながります。

 被害体験のある知的障害者のなかには、トラウマ(心的外傷)のことを学習する機会のなかった人が多いんじゃないかと思います。例えば、突然、恐ろしかった過去の体験を今思い出して震えたり、逃げ出したくなったことがあったかもしれません。なぜこんなことが起こるのか、トラウマについて知らずわからないままでは、対処するのは容易ではありません。こわくて変で、分かってもらえるはずがないからと思って、長い間誰にも話さなかったかもしれません。

 一方で支援者は、トラウマのことは知らないわけではないけれど、自分が支援する人にトラウマがあるとは思ってもみなかったかもしれません。トラウマがあるとわかっても支援に結びつけるのは難しいし、逆に嫌なことを思い出させるはよくないとためらうことがあります。

 健康さが損なわれ、不適切で不適応な行動の背後にトラウマの影響があるかもしれません。そうであれば、本人も支援者もそれをトラウマの影響や関連した問題(行動)を理解し、支援に活かす必要があります。『児童期逆境体験ACE質問紙』によるスクリーニングと『キックスタート 』による心理教育はまさしくそのスタートとしての位置づけです。最後に、リカバリー/回復は可能であるというメッセージを強調することも心理教育には含まれます。         (ホンダタカシ)


2019/12/06 16:26 | 未分類trackback(0)  | top

『トラウマを支援者と学ぶ』 

支援のために、知的障害者等を対象としたトラウマに関する心理教育のための解説冊子を作成中です。虐待や自然災害などにあった子どもを対象としたものは公表されていますが、知的障害者を対象にしたものはないように思います。

名称未設定

この冊子では、問題行動のある知的障害者をも対象と考えています。  以前に作成した「性問題行動のある知的・発達障害児者の支援ガイド」にある『性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック』と同じように、1ページで1つのテーマを数行で解説します。

 最初のページは、「トラウマは心のきず」というタイトルで、トラウマを説明します。
「トラウマとは、命にかかわるような、たいへん おそろしい体験をしたときにおこる「心のきず」です。はげしいストレスをかんじたり、ストレスがたまると、トラウマ、心のきずとなることがあります」
 わかりやすい説明は難しいのですが、フラッシュバックや解離についても説明します。不慣れな説明者用に脚注として欄外に簡単な説明を設けています。冊子のタイトルの通り「トラウマを支援者と学ぶ」のが目的です。

 作成の参考としているのが、この欄でもたびたびご紹介したSAMHSAの論文(pdf)です。これは知的障害者を対象にしたものではありませんが、大変詳しく、また支援者にとっても大変有効な手引きともなっています。




 橋本 橋本忍『複眼の映像 ー私と黒澤明ー』(文春文庫)です。黒澤明監督の『羅生門』、『生きる』、『七人の侍』などを黒澤明らと共同脚本を執筆し、さらに『砂の器』、『八甲田山』などの脚本も手がけました。

 映画づくりでの設計図である脚本は、1にテーマ、2にストーリー、3に人物設定は重要だと説かれます。
『七人の侍』の中心人物、志村喬の演じる勘兵衛の人物像について、黒澤明は背の高さは5尺4、5寸(163~ 166cm強)から始まり、背後から声をかけられた時の振り返り方などを書き込んでいたそうです。どこまでも具体的で詳細です。彫り込みまれた何人もの登場人物たちがテーマにしたがって、矛盾なくリアルにストーリーを展開するのですから。
 黒澤映画は、黒澤監督をはじめ2、3人の脚本家が共同で制作します。脚本家がそれぞれ分担するのではなく、「用意ドンで、一斉に同じシーンを書」き、一番良くできたものをとる、またはいくつかの脚本から部分を取り出して組み合わせる、という大変ハードは方法をとっていました。複眼による完成度の高い共同脚本、つまりいきなりの決定稿です。他にも興味深い話が次々と。           
    (ホンダタカシ)

2019/08/19 07:01 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマと問題行動を包括的に支援する

 われわれが対象としている性問題行動のある人では、児童期逆境体験ACEsなどのトラウマに樹木関連した症状や障害のある率が他に比べて大変高いことはよく知られた事実です。また、反社会的な問題行動のある知的障害者においても同様に高いことはわれわれの調査からもわかっています。
 問題行動のある人にトラウマがあるとわかった時、どのように支援するべきか。この問いは見方を変えれば、トラウマと問題行動の関係をどのように考えるかと同じです。
 
トラウマだけを対象とした治療や支援の技法はたくさんあります。SAMHSA'S TIP 57 (2014)にもいくつか紹介されています。例えば、MeichenbaumのSIT: Stress Inoculation Trainingストレス免疫トレーニングは、認知行動療法の枠組みで心理教育・リハーサル・その実践という3段階でスキルを身につけようとするプログラムです。適用範囲が広く魅力的に思えます。
 一方、精神疾患や物質使用、非行や犯罪を対象としたものもこれまで発展をしてきました。われわれが翻訳し刊行した性問題行動を対象としたフットプリントもその一つです。
 トラウマと問題行動が併存している状態であれば、、トラウマか問題症状のどちらか一方だけを扱う方法、あるいは両方を並行して、または連続して治療する方法があるようです。トラウマと問題行動を同時に扱うプログラムもいくつかSAMHSAには紹介されているます。両者が深く結びついているのであれば、包括的に治療していくのが理にかなっているのではないかと思います。
 
 その一つ、PTSDと物質乱用の併存を治療するプログラム、Najavits, L. M. のSeeking Safetyがあります。訳せば、Safety安全を求めて、ですが、翻訳書そのままの「シーキングセーフティ」です。
 物質乱用の治療の対象者のうち、PTSDとの併存率は12〜34%であって、女性ではさらに増え30〜59%にも達するとのデータがその出発点です。プログラムのゴールは安全です。物質の使用は自らの安全を損なう行為であり、トラウマによる自己破壊的行動も安全を著しく損ないます。安全であることは最優先であり、生活を質を高めることにつながります。
泉南ビーチ
 マニュアルというタイトル通り、プログラムの参加者への方向性や助言は具体的であり、柔軟性に富んでいます。同時に、セラピストへの助言や指示は的確でアンダーラインを引きながら読んでいます。
 
Meichenbaum, D. (2007). Stress Inoculation Training: 
A Preventative and Treatment Approach. In Lehrer, P. M., Woolfork, R. L. & Sime, W.E. (Eds.), Principles and practice of stress management. 3rd ed. pp. 497–516. New York: Guilford Press.
Najavits, L. M. (2002).  Seeking Safety: A Treatment Manual for PTSD and Substance Abuse. Guilford Press. リサ・M・ナジャヴィッツ 松本俊彦・森田展彰(監訳)井上佳祐・川地拓・古賀絵子・齊藤聖・高野歩・谷渕由布子・引戸絵未・渡邊敦子(訳)(2017)  PTSD・物質乱用治療マニュアル「シーキングセーフテイ」 金剛出版
       (ホンダタカシ)

 

2019/05/27 07:40 | 未分類trackback(0)  | top

荷風のローライ

 二眼レフのローライはなかなか楽しいフイルムカメラです。6センチ×6センチ(実際はほんの少し小さい)の正方形のフイルムサイズで、12枚撮りです。写真のローライには接写用のローナイナーをつけています。

Rolleiflex.jpg
  永井荷風は昭和11年10月26日(1936)にカメラを買ったことを「断腸亭日乗」に書いています。
「午後より時々驟雨あり。草稿を添削す。夜久辺留に往く。安藤氏に託して写真機を贖う。金壱百4円也。」

  この写真機がローライ・スタンダードであると田中長徳さんの本に載っています。1930年代のモデルだそうです。ちなみに「驟雨」はにわか雨、「草稿」はその前日に『濹東綺譚』脱稿とあるのでそのことでしょうか。「久辺留」とはキュペルといいう喫茶店でよく出てきます。「104円」がどれほどの価値かのかはわかりませんが、かなりの高額かもしれません。

 その後の12月9日、草
「年末に至り新聞記者出版商人等の来訪するもの多からむことを虞れ、昼飯を食して後直に写真機を携え亀戸に至り、大嶋町羅漢寺前大通りを歩み、・・」  

翌日12月10日、 「午前読書春水人情本午後写真機を携えて浅草公園に行く。」
 年が明けての昭和12年1月16日、
「家にあらば訪問記者に襲はるるが如き心地したれば、昼飯を喫して直に写真機を提げて家を出づ。」
 2月3日、
「家に至るに名塩君来りカメラ撮影の方法を教へらる。」
そしてとうとう5月12日には、
「帰宅後写真現像を試む。」

  その後、母親の亡くなった4日後の9月13日「午後写真機を提げて・・」、10月4日「写真焼附」。
昭和13年正月2日「帰宅後写真現像」、三月初五「・・浅草オペラ館に赴き楽屋及び部隊を撮影す。」

 浅草、玉の井、銀座への散歩にはローライをぶら下げて?倒木 いたようです。撮影だけでなく、現像、焼付まで行っていたようです。ペンキ塗りの偏奇館に暗室があったのか、それとも風呂場か台所を真っ暗にして暗室代わりとしたのか。撮った写真の一部は、「おもかげ」という小説随筆集に収められており、国立国会図書館デジタルコレクションhttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1261446で見ることができます。
   
 「反時勢的傍観者的な姿勢」(解説)と評される荷風ですが、しばしば外出に携えた「カメラ」は何をもたらしたのか。完読までの楽しみの一つです。

 それにしてもこの『断腸亭日乗』も武田百合子『富士日記』にしても食べる話は必ず書かれています。荷風はどこで食べたか、武田百合子は何を食べた、という違いはありますが。 

永井荷風(著)磯田光一(編)「摘録 断腸亭日乗」上下 岩波文庫(1991)  
田中長徳(著)「二眼レフカメラ ワークショップ」枻出版社(2009)  
    
                               (ホンダタカシ)

2019/04/24 08:40 | 未分類trackback(0)  | top

重版を作る

Fp.jpg  『性問題行動のある知的障害者のための16ステップー「フットプリント」心理教育ワークブック第二版』を今年2月に重版しました。かなり狭い分野を対象としたものですが、たくさんの方が手に取っていただき大変うれしく思っています。
 本が売れて最初に印刷した部数が足りなくなった時、そのまま増刷されるかそれとも重版されるかです。重版とは文字通り版を重ねることで、最初の版のままのこともあれば手を入れることもあるようです。活字離れや出版不況がいわれ、足りなくなったら増刷、重版というわけではないようです。一方で読みたい本が手に入らないといったこともあります。



  重版を機に本書を点検してみると、校正漏れ、誤解しやすい文章、わかりにくい表現などがありました。今回の重版では10箇所程度を修正しました。決してほめられたことではなく、初版を購入された方には大変申性問題支援ガイド:カバー最終案し訳なく思います。



 今月に入って、『性問題行動のある知的・発達障害児者の支援ガイド――性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック』の重版作業にも取りかかりました。この本では、訂正や改良だけでなく、出版後のわれわれの研究や実践の広がり深まりを踏まえたものにしたいと思いました。ここでもたびたびご紹介している児童期逆境体験ACEsなどによるトラウマがどのように影響し、性加害行動/問題行動への支援にどのように取り 組めばよいか、こうした点を盛り込みたいと思いました。



 しかし、あまりに多くを加筆すると初版との違いが大きくなり、さまざまな点でバランスが崩れます。このあたりの判断が難しいところです。また、どちらの本にしても、どこがどのように変わったのかは、初版と重版後をつき合わせないとわかりません。読み手に親切とは言えないところです。申し訳ありません。



鍵
 モールス信号の練習を始めました。トン・ツーというやつです。アルフアベットもひらがなも短点と長点であらわします。例えば、SOSだと、・・・ ーーー ・・・です。写真の黒のレバーのついたものが電信用の鍵で、親指と人差し指ではさむようにして短点と長点を打ちます。横振りとかパドルと呼ばれます。その右はインターネットの記事から作った練習機で、鍵に合わせてプープーと音がでます。実際に電波を出すためには三級のアマチュア無線技士の資格が必要です。そのためにはまず受験勉強。
  (ホンダタカシ)

2019/03/10 09:00 | 未分類trackback(0)  | top

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