京都ライトハウスを見学しました。

 授業として学生と千本北大路にある「京都ライトハウス」http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/を見学しました。点字図書館や点訳音訳、読み書きサービス、視覚障害幼児向けの親子教室、移動などの自立訓練を行う視覚障害の専門施設ですが、就労移京都ライトハウス行支援、就労継続支援B型の事業所であるFSトモニーも併設された総合的な福祉施設です。



 全盲の当事者の方から視覚障害者の日常生活のご説明とライトハウスの館内を案内していただきました。興味深い話がたくさんライトハウスパンフレットありました。

 視覚障害者=全盲と思う人が多いですが、実は「見えない人」だけでなく、弱視とかロービジョンと呼ばれる「見えにくい人」のほうが多く、視覚障害者全体の7割程度いっらしゃるそうです。おおまかには、全体がぼんやりと濁って見える、視野の中心は見えるが周辺が見えない(字が読める)、視野の中心に見えない部分がある(場所が分かる) と分かれますが、見えにくさは一人ひとり違うとのことでした。

  私たちは天気が良いと外出したくなりますが、まぶしいと見えにくくなる人は曇りの日を選ばれるそうです。

 外出についても、私たちの知らないことや単なる思いこみがありました。例点字ブロックえば、街中で白杖(はくじょう)で歩行されている方を見るとあたりの配置や方向などは熟知されているように思いますが、実は白杖で分かるのはせいぜい一歩先だけだそうです。

 
 ですから、駅のホームが一番恐いとおっしゃいます。点字ブロックを利用すれば安全に正しく歩けますが、点字ブロック上で電車を待つ人や物があるとよけ、点字ブロックから離れた途端に方向があやふやになり転落事故につながるそうです。恐ろしいことに落ちて始めて転落したことが分かるそうです。
 落ちる船岡寮前に気づくことは出来ない、防止できるのは周囲の人の気づきと声かけだと何度もおっしゃっていました。駅で最近よく耳にする、乗降客に声かけをうながすアナウンスです。


  学生の興味を引いたのは、触読時計や体温計、オセロゲームなどの福祉用具でした。実物を見て触らないとわかりません。講義で何度も聞くよりも、障害当事者の指摘や訴えの方が力があります。障害の専門家は障害者自身です。
  写真の個性的な建物は盲養護老人ホーム「船岡寮」ですが、現在は移転して「ライトハウス朱雀」となり他の高齢者施設と併設されています。     (ホンダタカシ)

2018/02/02 17:23 | 未分類trackback(0)  | top

再トラウマ化を防ぐ

 例えば、食事の時間、プラハの店1 支援のプログラムに食事も含まれていると。
 食事なんていらない、いつも決まったメニューばかりは嫌だなどと不平を言い、食事担当のスタッフに当たり散らす言動を前にすると、なんてわがままで自分勝手な奴、あるいは健康への意識が低く状況の理解が悪いと思われかも知れません。摂食上の問題とみなされることすらあります。

 しかし、トラウマを意識した視点からみたらどのように考えられるでしょうか。例えば、その人の子ども時代、母親はいつも冷蔵庫にあるものをいっしょくたにして無理矢理食べさせようとしていたとしたら。
 食事の時間はみんなにとっては待ちに待った時間であったとしても、その人にとっては子ども時代の嫌な体験を思い起こさせるだけでしかありません。

プラハの店2  その人は食事のたびにわき上がる不快な気持ちに対していら立ちや不満を示します。もし、支援のスタッフがそのことに無頓着で無理解であれば、食事場面での問題行動と考えて注意するか無視するしかありません。一方、その人は過去のトラウマの再燃に一人で苦しみます。

 ここでいう「再トラウマ化Retraumatization」とは、複数の出来事に暴露された影響を指すだけでなく、(以前の)トラウマ・ストレスが再体験されるプロセスです(SAMHSA, 2014, p. xviiiを一部改編)。再トラウマ化のリスクは支援のいたるところにあります。
 SAMHSA(2014)は、支援する側は絶えずトラウマを意識した視点(レンズ)から、支援の方法や内容を点検するよう求めています。もっとも問題なのは、不適切な行動をする人ではなく、トラウマについての知識も意識も関心もがない支援する側です。

  SAMHSA (2014) Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57.

さて。富士日記
 先日、1泊の入院を経験しました。数人の高齢の患者さんがテーブルを囲んで食事中でした。その話し声、面会に来た家族、看護士さんたちの声、さまざまな機械の音などがあちこちから聞こえます。面会に連れられてきた子どもがゲームをし、ジュースをねだり、その横で問診書を書きました。案内された病室でぼんやりとしていると、見慣れた景色は病室の窓ガラスを通すと少し遠のいたように感じます。同じTV番組も家で見るのと同じではありません。2時間おきに見回りに来られますが、病棟のスタッフがの方は正しくていねいで、動作や会話の1つ1つの意図と思いが伝わる確かなスキルです。
 病院のベッドでも武田百合子の「富士日記(中)」、そのなかで当時山梨では「ヘップ履き」と呼ばれるサンダルがことが出てきます(昭和41年12月)。それは、かかとのついたスリッパでオードリー・ヘップバーンが映画の中で履いていたので流行ったらしいのです。インターネットで見たらその映画は『ローマの休日』。どの家庭にも1足はあるビニール製のつっかけの由来です。          (ホンダタカシ)

2018/01/19 21:08 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマ・インフオームド・ケアの第一歩は「安全の確保」

「 トラウマ・インフオームド・ケア Trauma Informed Care」とは、トラウマに関する詳しい情報にもとづいた支援/ケアです。ここでよく引用する米国の機関、SAMHASの冊子のなかにトラウマ・インフオームド・ケアを実施する際の課題がまとめられています。
信号機
 最初に取り上げされているのは「安全の確保」です。トラウマ・インフオームド・ケアにおいて最初に取り組むべき、最大のものが安全です。逆境や被害体験を受けた人は日常的な感覚が安心感、安全感を欠いたものになっている可能性が高いからです。その人の意志とは無関係に浮かぶ嫌な記憶や悪夢、他人とのつながりが薄れるような感じ、自分の感情をうまく制御できない、などいつも追い立てられて危険が迫ってくるような感覚をもっているかもしれません。たとえば、休暇や転勤などでいつもの支援スタッフが休んだり交代したりしただけでも、本人の安全感を損ねるおそれがあると冊子では指摘されています。
 
 SAMHSAの冊子にはその対策として、現実感を取り戻し確認する方法(グラウンデイング・テクニック や面接の終了時に必ずその後何をするかプログラムを聞く)や面接やワークの開始と終了時に決まり切った動作を行うなどがあげられています。

 環境面への配慮も重要です。大きな音な声、匂い、不用意な身体接触などは避けねばなりません。例えば、穏やかで抑えたトーンで話す人には同じように静かに話します。

 トラウマ・インフォームド・ケアにおける安全への取組みは、支援者側に求められることです。ここでいう支援者は、福祉サービスや医療サービスを提供する者/事業者はいうに及ばず、家族や地域社会も含まれます。支援する側が、トラウマ・インフオームド・ケアでいう「安全の確保」を知らなかったり、関心がなかったりすると、良かれと思った支援が逆効果をもたらす危険が常にあります。

 受容的な態度は支援者の基本的な態ラーメン店度とされていますが、もし受容的な態度で接近してきた加害者による被害体験のある人は、ひょっとしたら安全への脅威を感じて警戒度を高めるかもしれません。支援者は絶えず「安全の確保」を意識して支援活動すべきである。
 安全が保てない場合、逆境や被害体験を受けた人に引き起こされるのは再トラウマ化です。その影響がさらに重篤になるおそれがあります。

 「安全の確保」は入場ゲイトであって、ゴールでもあります。絶えず課題になるとSAMHSAの冊子は教えます。

SAMHSA (2014) Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57.  U.S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES  p.7 <Retrieved from  http: //store.samhsa.gov/product/TIP-57-Trauma-Informed-Care-in-Behavioral-Health-Services/SMA14-4816.>            (ホンダタカシ)  

2018/01/05 09:43 | 未分類trackback(0)  | top

古本、新本

 最近、古本、新刊書、雑誌を取り混ぜて本を買い込んでいます。

 月村了衛『機龍警察 狼眼殺手』(早川書房)は、接近戦専用兵装の龍機兵ドラクーン積読を擁した警視庁特捜部を描いた派手なアクション小説&警察小説です。

 龍機兵とは『アイアンマ』ンに出てくるパワードスーツのようなもの、ただし空は飛びません。この装備自体が近未来的ですが、警察内部の軋轢も同時並行します。かって警察小説といえ八七分署のような刑事物のはずでしたが、内部機構のうごめき描写に変貌したかのようです。著者サイン本ではありますが、☆3つ半というところでしょうか。
 

 山折哲雄『愛欲の精神史』(小学館)は八年間にわたる雑誌連載をまとめたものです。エロスを軸に宗教、哲学、文学が縦横無尽に論じられます。

 ゼロと空をあつかった章のなかに、かって大変有名であったロゲルギストの科学エッセイをきっかけにした「日本人は”ゼロ嫌い”か」という節があります。 ”正午は午前か午後か”という問いに始まります。辞典では「昼の12時(=午後0時)」とあり、午後は「正午から夜の12時まで間」、午前は「真夜中の零時から正午までの間」(いずれも新明解国語辞典第7版)。では昼飯時の12時半はどうか。午後0時30分と言うよりは、厳密には正しくはないけれど午前12時30分という言い方の方がなじむのではないか。なぜなら、どの時計も12時はあっても0時はない。だから、日本人は・・・となりそうですが、そうかしら。

 ホンダ解釈をまじ時計 えてご紹介しましたが、本ではさらに列車の時刻表に着目した秀逸な学生レポートが紹介されています。列車の時刻表は24時で示されていますが、23時に次は0時か24時か、関東と関西に違いがあるのか。
 時刻表を比較すると、24時発の阪神電車、京阪電車がある一方で阪急やJRのように0時発電車もあります。昼の12時30分のほうが午後0時30分よりはるかに自然だと思いましたが、そう簡単に判断できず、”ゼロ嫌い”とも断定しがたいようです。でもなぜ時計に0時がないのか。

 「愛欲の精神史」の中ほどでは源氏物語に展開し、橋本治の著作を援用して有名な「雨夜の品定め」が論じられます。そのなかで、光源氏は12歳で元服しすぐにに葵の上と夫婦になったというのです。12歳といえば小5か小6!源氏物語に登場する人物は、少なく2、30代の成人だというのは単なる思いこみでしかありません。こうした読み解きを手がかりに平安時代のエロスへとさかのぼります。 

 細澤仁『実践入門 解離の心理療法 初回面接からフオローアップまで』(岩崎学術出版社)を本題にするつもりだったのですが、その手前で脱線してしまいました。以下次号。          (ホンダタカシ)


2017/12/22 08:28 | 未分類trackback(0)  | top

再び「トラウマとは何か」

 トラウマ・インフォームド・ケアTICについて研究や実践をしていますが、前提となるトラウマについてわかりやすく網羅的な 定義をのせました。以前ご紹介したことのあるSAMHSA(Substance Abuse and Mental Health Services Administration Center for Substance Abuse Treatment物質乱用とその治療のためのメンタルヘルスサービス管理センター)のものです。原著ではひとつのパラグラフにおさまっていますが、ここではわかりやすくするために番号をふって箇条書きにしました。

  1. SMA14-4816.jpgトラウマは、個人が身体的感情的に有害で脅威的だと体験したひとつの出来事、一連の出来事または状況に起因している。
  2. トラウマは個人の機能や能力、身体的、社会的、感情的または心理的な幸せに対して有害な影響を与え続ける。
  3. トラウマは、全ての人種、民族、年齢、性指向、ジェンダー、心理社会的な背景、地理的領域の人に対して影響を及ぼすことがある。
  4. ひとつのトラウマ体験は単一の出来事のこともあるし、一連の出来事や慢性的状況(ネグレクト、DV)、あるいは後者だけであるかもしれない。
  5. トラウマは、個人、家族、グループ、地域社会、特定の文化、世代に影響を及ぼすことがある。個人または地域社会のもつ対処のための資源をほとんどの場合圧倒し、その出来事を体験した時、「戦う、逃げる、あるいは凍りつく」反応を引き起こすことが多い。
SAMHSA (2014) Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57.  U.S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES  p.7 <Retrieved from  http: //store.samhsa.gov/product/TIP-57-Trauma-Informed-Care-in-Behavioral-Health-Services/SMA14-4816.>

1. 個人の体験であって人により異る主観的なもので、その原因はひとつの出来事の場合や連続した複数の出来事や状況もあるとしています。
2. 人間の健康さや幸福感を侵しつづけ、悪影響は慢性化することがあり一回だけの打撃ではありません。1.と2.が中核の定義としてひとまとめにされています。
3. 例えば戦争を考えればわかりますが、トラウマは人間のあらゆる特性や属性に影響します。
4. 1つのトラウマの体験はとひとつの出来事とは限らず、慢性化した状況や環境の場合があります。
5. トラウマに対処しようとする手段や試みがことごとく失敗し、なす術がないと分かると「戦う、逃げる、あるいは凍りつく」反を引き起します。
「戦う、逃げる、あるいは凍りつく」反応とは、トラウマに対処しようとした行動で、その時はなんとかかわせたとしても、不適応でより困った結果におちいりやすい。以下のようなものです。
「戦う」 過度の警戒、怒りっぽい、過剰に反応する、攻撃的、挑発的。
「逃げる」 人間関係の回避、親密さの回避。
「凍りつく」 受動的、依存的、境界線を維持できない。
Levenson, J. S., Willis. G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care : Transfoming Treatment for People Who Have Sexually Abused. Safer Society Press.  p. 56.
全作品

 さて。
 探していた「武田百合子全作品」(中央公論社)の全巻を天神橋商店街の古書店で見つけて購入しました。行く先々の古書店で尋ねても、口を開くのもおっくうという感じで首を横に振られるだけでした。小説や文芸書のたぐいは売れないね、というお答えばかりでしたが、なかにはどこの女優さん?と逆に質問されて驚いたこともあります。買った古書店のおじさんは、美人だったからねえと、まるで知り合いのだったかのようにおっしゃいましたが。
  ほしいなあと探していたものを偶然見つけた時には自分の運もまんざらでもないなあと思い、商店街の別の店に足が向きました。            (ホンダタカシ)        

2017/12/07 21:28 | 未分類trackback(0)  | top

女性が受けた暴力被害の調査

  龍谷大学で開催された公開シンポジウム『人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは』の続きです。基調講演のあと、シンポジウム「日欧比較ー女性を対象とした暴力被害調査」がひらかれ、大変興味深い二つの報告がありました。

 「EUが実施した女性を対象とした暴力被害者調査の目的と成果」と題し、Sami Nevala氏(欧州基本権機関・統計調査部門主任)が報告されました。調査はEUの28カ国の18歳から74歳の女性を対FRA.jpg象にインタビューによって行われました。調査は、現在のパートナー・過去のパートナー・パートナー以外による暴力被害を対象に、身体的・心理的・性的被害の体験、子供時代の被害体験、セクハラやストーカー、さらに支援機関との接触、関連施策との意識など多岐にわたる内容です。

  結果の詳細は、当日配布された資料(Violence against women: an EU-wide survey. Results at a glance http://fra.europa.eu/en/publication/2014/violence-against-women-eu-wide-survey-results-glance)に詳しく載っています。

 注目したのは児童虐待を扱った「1.6 Experiences of violence in childhood」についてです。児童期逆境体験ACEの項目でもあります。そのなかで、子供時代(15才以前)に性暴力被害を受けた女性は12%!であったと報告されています。身体的虐待の経験は27%です。0%であることが当然だと思えば、約1割から2割は高率です。明るみに出ないものも含めれば広がっており(女性への)児童虐待については、EU諸国は再び重点的に取り組むべきだと報告書は訴えています。

 では、日本ではどうでしょうか。
 シンポジウムでは「日本調査からわかったこと」との発題で、浜井浩一氏、津島昌寛氏が報告されました。調査内容や対象年齢はEUと同じですが、近畿圏在住の女性が対象になりました。回収率は30.3%、EUは平均42.1%ですが国によるバラつきが大きかったようです。

 調査結果では、15歳以前に大人からの(身体的・心理的)暴力被害を受けた女性は14%ですが、EUでは35%でした。しかしながら、性暴力被害については10%!で、EUの結果(12%)に近い結果です。
 また、15才以上での深刻な暴力被害を警察に通報したかどうかを見ると、非パートナーからの暴力は12%(EUは13%)の女性が通報しましたが、パートナーからの深刻な暴力被害を警察に通報した女性は日本では0%!(EUは14%)でした。この結果はさまざな要因が混じり合っ小和田た結果であると思われますが、こうした結果を重ね合わせると、報告されない、通報されない暴力被害も多く、EUの報告書の指摘と同様の実態なのかもしれません。
 厚生労働省の児童虐待統計では児童相談所への虐待相談件数とされ、総虐待相談件数に占める性虐待相談の割合は低位です。今回の調査結果を考えれば、実際とのズレが生じているかもしれません。
 なお、龍谷大学の調査結果は報道提供されており、ご紹介した内容は報道さ小和田ホームれています。


  さて。
 この駅舎は豊橋と辰野を結ぶ飯田線小田山駅です。俗に秘境駅と呼ばれる無人駅です。確かに民家からは離れていますが、秘境と呼ぶかどうかは難しいところです。でも、臨時急行「秘境号」が運転され、たくさんの探検家が乗車されます。見物人の多い秘境というのも形容矛盾のような気がしないでもありません。映画のロケにも似合いそうな美しいたたずまいの駅です。
 無人駅も多いので車掌(カレチと呼ぶらしい)さんは切符の回収や出発合図、それに観光案内まで大忙しです。2両編成の電車が天竜川など三河川合の山あいをくねくねと走ります。紅葉が染める車窓を肴にビールを飲めば、ローカル線気分は上々です。      (ホンダタカシ)


2017/11/24 22:05 | 未分類trackback(0)  | top

「人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは」

  過日、犯罪社会学会の公開シンポジウムが「人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは」をテーマに龍谷大学で開かれました。暴力の解剖学
 「暴力の解剖学」というタイトルでペンシルベニア大学教授エイドリアン・レイン氏が基調講演をされました。同名の本が出版されています。

  エイドリアン・レイン 高橋洋(訳)(2015) 「暴力の解剖学:神経犯罪学への招待」 紀伊国屋書店

 本のサブタイトルに神経犯罪学という耳慣れない学問領域が提案されていますが、基調講演の副題にあるように「犯罪の生物学的起源を分析する」ものです。。犯罪、とりわけ暴力について、胎児に対する喫煙、薬物使用、アルコール摂取の影響、さらに多数の脳の画像などによって大脳の構造や脳機能の不全と暴力犯罪の強い関連、最後に栄養状態の影響が解説されました。
 こうした生物学的側面ばかりがを目立ちますが、著書ではさらに生物学要因と社会的要因の相互作用をバイオソーシアルなものとしてとらえ、反社会性や暴力の生成が検討されています(本書 第8章)。

 マイケル氏(仮名。著作ではオフト氏)の事例は衝撃的です(本書 pp. 452-455)。学校教師であって、再婚して子供と奥さんがいるマイケル氏は、40歳頃から徐々に変化し、小児などを対象にした性暴力犯罪を実行しました。介入プログラムを受けましたが、性暴力は改善しません。ところがマイケル氏の脳に腫瘍が見つかり、それを切除したところ行動が激変し、情動、認知や行動も改善し、プログラムも終えることができました。
 ところが、数ヶ月後再び行動は悪化したので検査したところ、腫瘍が再び見つかったので切除したところ、以前のように戻ったとのことです。ハンドアウト

 著者エイドリアン・レイン氏は、この事例について次のような問いを発します。個人の力では対処できない脳腫瘍のために反社会的行動が引き起こされたのなら、「(その)逸脱行動には法的責任があるのか?」(p.455)。本人の意思は腫瘍に左右されるのか、それとも腫瘍のあるなしに関係なく意思は存在するといっていいのか。
 講演会場では問えるー問えないのどちらの意見もあったように思います。私はといえば、腕組みしたままで答えることができませんでした。

 このシンポジウムの中の「日欧比較ー女性を対象とした暴力被害調査」では初めて目にしたデータもあり、大変興味深いものでした。次回にでもご紹介します。       (ホンダタカシ)

2017/11/10 20:56 | 未分類trackback(0)  | top

すべての子どもに遊び場を/公園のユニバーサルデザイン

 つい最近出版された本です。子どもの遊び場
 みーんなの公園プロジェクト 柳田宏治・林卓志・矢藤洋子(編著)(2017)「すべての子どもに遊び場をーユニバサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド」萌文社

 この本は、視覚や聴覚に障害のある子ども、クラッチなど福祉用具を利用する子ども、発達障害などさまざまな特性のある子どもが対象です。ユニバーサルデザインの原則を取り入れた子どもの公園の考え方、地域の人たちガイドなどからのさまざまな意見、もちろん子どもたちの意見をもスパイラルアップしていくデザイン、 そして最後に、誰もが楽しめる遊び、遊具、場所が、写真を多用して紹介されています。

 文字にするとこの楽しさは伝わりにくいのですが、この本を作った「みーんなの公園プロジェクト」のホームページをご覧いただく方がいいかもしれません。http://www.minnanokoen.net/index.html

 公園というのは、誰もが利用できる、楽しめる、喜んで迎えられるコミュニティにある場です。
授業では、公園のユニバーサルデザインというタイトルで、視覚障害のあるお父さん、ガイド2お母さん、子どもの3人家族が休日に楽しめる公園をテーマに行いました。事前に手引きとアイマスクによる歩行を何度か練習したうえで、中書島にある府立伏見港公園http://www.kyoto-park.or.jp/fushimi/のフイールドワークに出かけました。この授業については、以前にも取り上げています。
すべり台  当日は雨天で、先の台風で飛ばされた草木や残された泥などがあり、コンディションはよくありませんでした。移動する、触れる、聞く、嗅ぐなどからだを総動員してフイールドワークしました。
ブランコ
 どこの公園でも見かけるすべり台やブランコですが、子どもなら誰でも安全に楽しめるものにするには、どうすればいいか。
コストを度外視してというわけにはいきません。すべての子どもや大人が楽しんでいるシーンをいかに想像できるかが試されます。        (ホンダタカシ)

2017/10/29 10:56 | 未分類trackback(0)  | top

「十代の脳の謎」

IMG_1735.jpg  前回のテーマとした法務省の勉強会資料のひとつ、八木先生の「青年期の発達と若年受刑者の実態:精神医学的観点から」に引用されていた論文を入手したので簡単にご紹介します。
   J. N. ギード「10代の脳の謎 The Amazing Teen Brain」日経サイエンス2016年3月号 pp.37-42。この雑誌は必要な論文記事だけをPDFとして購入できるので便利です。

 10代の脳は、それまでの子どもの脳が老いたものでもなく、かといって大人の脳の未完成品(生煮え版!とのたとえ)でもない。10代の脳はサイズが大きくなることで成熟するのではない。脳には言語、視知覚、感情、実行機能などさまざま機能をもつ領域がありますが、異なる領域どうしがより多く接続され、各領域がより専門化することによって成熟します。脳内のネットワークのつながりが変化し、脳領域間の接続が増加し強化されるというのです。10歳過ぎから30歳頃にかけて成熟します。

 脳の各領域は足なみをそろえて成熟するのではないようです。感情や動機づけに強い関連を大脳辺縁系は10代前半の思春期に急激に発達します。大脳辺縁系は海馬、扁桃体などのいくつかの領域からなり、脳の内部にあります。
 一方、組織化や意思決定、計画、感情の制御能勢2など実行機能と言われる機能に関連している前頭前皮質は、大脳辺縁系より10年ほど遅れて成熟します。感情をつかさどる大脳辺縁系と衝動的行動を制御する前頭前皮質の成熟に時間的なズレがあることです。感情や衝動のアクセル役とブレーキ役の領域の成熟にミスマッチがあるので、10代の若者は子どもや大人に比べて危険な(感情的な)行動を取りやすいと言えるそうです。

 環境に合わせて脳の領域間のネットワークを変更してさまざまな行動がとれるという柔軟性、可塑性は10代の特権ですが、一方でそれがあだとなる脆弱性も潜んでいます。振れ幅の大きさこそが10代なのかもしれません。「10代の若者は自身のアイデンティティーを作り上げるすばらしいチャンスを手にしている。自らの選択に従って自らの脳を最適化しているのだ」と論文は結んでいます。   (ホンダタカシ)

2017/10/13 11:24 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマ理解は対象者の支援に欠かせない

  「週間福祉新聞」(9月25日)に、日本精神保健福祉士協会の全国大会が大阪市内で開催された昼下がり記事が載りました。そのシンポジウムで篭本先生からご自身の治療経験をもとに、「子ども時代の虐待体験が成人後の精神疾患の原因となっている人が多い。・・」との指摘があったと記事は伝えています。 児童期逆境体験ACEは成人期の心身の状態に大きな影響をもたらすという指摘です。

 インターネットをたぐっていると、法務省の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」に行きあたりました。民法では成年を20歳としていますが、選挙出来る年齢が18歳とされた結果、刑事司法の立場から成年を何歳とすべきかを検討されているようです。
影
  この勉強会では、犯罪、あるいは非行をした未成年者から成人にいたる青少年について議論されています。この勉強会は平成27年11月にスタートし10回開催されていますが、その平成28年3月の7回目は実践的に活動されている精神科、小児科の先生が意見を述べられ、その議論や資料が大変面白く有益です。http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00131.html
 昼下がり2
 とりわけ、八木先生の資料は有益で刺激的です。脳の発達と成熟、善悪などの判断能力や自己制御能力の発達やそれらに影響するトラウマ要因、さらに可塑性や教育の可能性について幅広く検討されています。この資料においても児童期逆境体験ACEがあげられています。「ヒトの発達」をテーマにしたスライド資料では、遺伝的要因と後天的な学習要因を前提にした、発達特性ーアタッチメント(愛着)ートラウマ(ーレジリエンス)の相互作用の図式が示されています。興味深いもので、見方を変えれば子どもから成人になるプロセスを発達特性、アタッチメント、トラウマ(とレジリエンス)でとらえることが有効だとの指摘だと思えます。相互作用を繰り返す3要因+1要因の拡大、縮減、偏りなどが問題行動や脆弱性をもたらしていると見ることができます。        (ホンダタカシ)

2017/09/30 15:59 | 未分類trackback(0)  | top

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