「人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは」

  過日、犯罪社会学会の公開シンポジウムが「人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは」をテーマに龍谷大学で開かれました。暴力の解剖学
 「暴力の解剖学」というタイトルでペンシルベニア大学教授エイドリアン・レイン氏が基調講演をされました。同名の本が出版されています。

  エイドリアン・レイン 高橋洋(訳)(2015) 「暴力の解剖学:神経犯罪学への招待」 紀伊国屋書店

 本のサブタイトルに神経犯罪学という耳慣れない学問領域が提案されていますが、基調講演の副題にあるように「犯罪の生物学的起源を分析する」ものです。。犯罪、とりわけ暴力について、胎児に対する喫煙、薬物使用、アルコール摂取の影響、さらに多数の脳の画像などによって大脳の構造や脳機能の不全と暴力犯罪の強い関連、最後に栄養状態の影響が解説されました。
 こうした生物学的側面ばかりがを目立ちますが、著書ではさらに生物学要因と社会的要因の相互作用をバイオソーシアルなものとしてとらえ、反社会性や暴力の生成が検討されています(本書 第8章)。

 マイケル氏(仮名。著作ではオフト氏)の事例は衝撃的です(本書 pp. 452-455)。学校教師であって、再婚して子供と奥さんがいるマイケル氏は、40歳頃から徐々に変化し、小児などを対象にした性暴力犯罪を実行しました。介入プログラムを受けましたが、性暴力は改善しません。ところがマイケル氏の脳に腫瘍が見つかり、それを切除したところ行動が激変し、情動、認知や行動も改善し、プログラムも終えることができました。
 ところが、数ヶ月後再び行動は悪化したので検査したところ、腫瘍が再び見つかったので切除したところ、以前のように戻ったとのことです。ハンドアウト

 著者エイドリアン・レイン氏は、この事例について次のような問いを発します。個人の力では対処できない脳腫瘍のために反社会的行動が引き起こされたのなら、「(その)逸脱行動には法的責任があるのか?」(p.455)。本人の意思は腫瘍に左右されるのか、それとも腫瘍のあるなしに関係なく意思は存在するといっていいのか。
 講演会場では問えるー問えないのどちらの意見もあったように思います。私はといえば、腕組みしたままで答えることができませんでした。

 このシンポジウムの中の「日欧比較ー女性を対象とした暴力被害調査」では初めて目にしたデータもあり、大変興味深いものでした。次回にでもご紹介します。       (ホンダタカシ)

2017/11/10 20:56 | 未分類trackback(0)  | top

すべての子どもに遊び場を/公園のユニバーサルデザイン

 つい最近出版された本です。子どもの遊び場
 みーんなの公園プロジェクト 柳田宏治・林卓志・矢藤洋子(編著)(2017)「すべての子どもに遊び場をーユニバサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド」萌文社

 この本は、視覚や聴覚に障害のある子ども、クラッチなど福祉用具を利用する子ども、発達障害などさまざまな特性のある子どもが対象です。ユニバーサルデザインの原則を取り入れた子どもの公園の考え方、地域の人たちガイドなどからのさまざまな意見、もちろん子どもたちの意見をもスパイラルアップしていくデザイン、 そして最後に、誰もが楽しめる遊び、遊具、場所が、写真を多用して紹介されています。

 文字にするとこの楽しさは伝わりにくいのですが、この本を作った「みーんなの公園プロジェクト」のホームページをご覧いただく方がいいかもしれません。http://www.minnanokoen.net/index.html

 公園というのは、誰もが利用できる、楽しめる、喜んで迎えられるコミュニティにある場です。
授業では、公園のユニバーサルデザインというタイトルで、視覚障害のあるお父さん、ガイド2お母さん、子どもの3人家族が休日に楽しめる公園をテーマに行いました。事前に手引きとアイマスクによる歩行を何度か練習したうえで、中書島にある府立伏見港公園http://www.kyoto-park.or.jp/fushimi/のフイールドワークに出かけました。この授業については、以前にも取り上げています。
すべり台  当日は雨天で、先の台風で飛ばされた草木や残された泥などがあり、コンディションはよくありませんでした。移動する、触れる、聞く、嗅ぐなどからだを総動員してフイールドワークしました。
ブランコ
 どこの公園でも見かけるすべり台やブランコですが、子どもなら誰でも安全に楽しめるものにするには、どうすればいいか。
コストを度外視してというわけにはいきません。すべての子どもや大人が楽しんでいるシーンをいかに想像できるかが試されます。        (ホンダタカシ)

2017/10/29 10:56 | 未分類trackback(0)  | top

「十代の脳の謎」

IMG_1735.jpg  前回のテーマとした法務省の勉強会資料のひとつ、八木先生の「青年期の発達と若年受刑者の実態:精神医学的観点から」に引用されていた論文を入手したので簡単にご紹介します。
   J. N. ギード「10代の脳の謎 The Amazing Teen Brain」日経サイエンス2016年3月号 pp.37-42。この雑誌は必要な論文記事だけをPDFとして購入できるので便利です。

 10代の脳は、それまでの子どもの脳が老いたものでもなく、かといって大人の脳の未完成品(生煮え版!とのたとえ)でもない。10代の脳はサイズが大きくなることで成熟するのではない。脳には言語、視知覚、感情、実行機能などさまざま機能をもつ領域がありますが、異なる領域どうしがより多く接続され、各領域がより専門化することによって成熟します。脳内のネットワークのつながりが変化し、脳領域間の接続が増加し強化されるというのです。10歳過ぎから30歳頃にかけて成熟します。

 脳の各領域は足なみをそろえて成熟するのではないようです。感情や動機づけに強い関連を大脳辺縁系は10代前半の思春期に急激に発達します。大脳辺縁系は海馬、扁桃体などのいくつかの領域からなり、脳の内部にあります。
 一方、組織化や意思決定、計画、感情の制御能勢2など実行機能と言われる機能に関連している前頭前皮質は、大脳辺縁系より10年ほど遅れて成熟します。感情をつかさどる大脳辺縁系と衝動的行動を制御する前頭前皮質の成熟に時間的なズレがあることです。感情や衝動のアクセル役とブレーキ役の領域の成熟にミスマッチがあるので、10代の若者は子どもや大人に比べて危険な(感情的な)行動を取りやすいと言えるそうです。

 環境に合わせて脳の領域間のネットワークを変更してさまざまな行動がとれるという柔軟性、可塑性は10代の特権ですが、一方でそれがあだとなる脆弱性も潜んでいます。振れ幅の大きさこそが10代なのかもしれません。「10代の若者は自身のアイデンティティーを作り上げるすばらしいチャンスを手にしている。自らの選択に従って自らの脳を最適化しているのだ」と論文は結んでいます。   (ホンダタカシ)

2017/10/13 11:24 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマ理解は対象者の支援に欠かせない

  「週間福祉新聞」(9月25日)に、日本精神保健福祉士協会の全国大会が大阪市内で開催された昼下がり記事が載りました。そのシンポジウムで篭本先生からご自身の治療経験をもとに、「子ども時代の虐待体験が成人後の精神疾患の原因となっている人が多い。・・」との指摘があったと記事は伝えています。 児童期逆境体験ACEは成人期の心身の状態に大きな影響をもたらすという指摘です。

 インターネットをたぐっていると、法務省の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」に行きあたりました。民法では成年を20歳としていますが、選挙出来る年齢が18歳とされた結果、刑事司法の立場から成年を何歳とすべきかを検討されているようです。
影
  この勉強会では、犯罪、あるいは非行をした未成年者から成人にいたる青少年について議論されています。この勉強会は平成27年11月にスタートし10回開催されていますが、その平成28年3月の7回目は実践的に活動されている精神科、小児科の先生が意見を述べられ、その議論や資料が大変面白く有益です。http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00131.html
 昼下がり2
 とりわけ、八木先生の資料は有益で刺激的です。脳の発達と成熟、善悪などの判断能力や自己制御能力の発達やそれらに影響するトラウマ要因、さらに可塑性や教育の可能性について幅広く検討されています。この資料においても児童期逆境体験ACEがあげられています。「ヒトの発達」をテーマにしたスライド資料では、遺伝的要因と後天的な学習要因を前提にした、発達特性ーアタッチメント(愛着)ートラウマ(ーレジリエンス)の相互作用の図式が示されています。興味深いもので、見方を変えれば子どもから成人になるプロセスを発達特性、アタッチメント、トラウマ(とレジリエンス)でとらえることが有効だとの指摘だと思えます。相互作用を繰り返す3要因+1要因の拡大、縮減、偏りなどが問題行動や脆弱性をもたらしていると見ることができます。        (ホンダタカシ)

2017/09/30 15:59 | 未分類trackback(0)  | top

トラウマというレンズを通して問題行動を見直す

    8月に買った新刊、「トラウマ・インフオームド・ケアー性加害者に対する治療を変化させる(仮訳)」はなか店舗1なかエキサイティングで示唆に富んだ本です。

  トラウマ・インフオームド・ケアという考え方は、少しとらえ難いところがあります。インフオームドinformedトは、「情報に基づく」とか「 よく理解した上での」という意味で、トラウマ知識に基づいた支援、とかトラウマをよく理解した上でのケア、となります。
  ですから、トラウマ・インフオームド・ケアは冒頭にあるように(p.9)、

トラウマを解消しようとするセラピーと同じではない。

では何かと言えば、
トラウマのレンズを通して問題行動を理解し応答するやり方である。

  問題行動の原因や動機をトラウマに求めるのではありませんし、ましてや言い訳にするのでもありません。性加害だけでなく、さまざまな問題行動をトラウマという観点=レンズから見直し、支援する考え方です。「レンズを通して」という表現はたびたび登場します。

  例えば、怒りをとりだしてみます。トラウマというレンズを通して怒りを見ると、「怒りは認識した脅威に対する反応」(p.19)と理解できることがあります。虐待やいじめを実行したした人や状況を思い起こさせる人や場面が脅威となるかもしれません。

    脅威に対する反応としての怒りは、単なる反撃ではなく、自分の安全がそこなわれそうだという悲鳴に近いもです。「怒りに隠されているのは脆弱性である」店舗2(p.19)。ですから支援者/セラピストとしては、  安全がおびかされていると感じたことと、怒りという反応とのつながりを対象者/クライエントに理解してもらうことが必要になります。

   対象者/クライエントが、自分の安全をおびやかす脅威をすばやくみつけ反応することは重要です。しかし、そのことばかりに注意がむくと自分のまわりで起こっていること、例えば友だちのA君の優しい気持ちやB さんのとげとげしい態度などに気づかず、誤解することだってあるとすれば、対象者/クライエントにとっても周囲にとってもうまくありません。

  安全がおびかされていると感じれば、だれかに援助を求める、その場から立ち去る、理解されるよう主張するなどの選択肢があるにも関わらず、よりによって怒りが選択されました。
  単に、怒りを抑制したり、管理/マネジメントするだけではトラウマ・インフオームド・ケアとは言えません。対象者/クライエントの安全感には全く対処されないからです。  

  トラウマというレンズを通して見ると言うことは、問題行動として指摘し対処するのではなく、トラウマの影響や症状として概念化/見立てたうえで支援すべきだ、との指摘です。
         
Levenson, J. S., Willis. G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care : Transfoming Treatment for People Who Have Sexually Abused. Safer Society Press.       


さて。岐阜県美術館2
  岐阜県美術館で、ナンヤローネ企画のひとつ「BY 80s FOR 20s」を見ました、または体験しました。1980年代が未来2020年に語りかけるもの、がテーマです。http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/index.php展示されている作品はポップで、イラストレーションやグラフィックスなどさまざまな表現があります。特別支援学校などとの共同制作も展示されています。
  美術館でもらったこの企画を対象の岐阜新聞の号外?のインタビューで、横尾忠則がグラフィックスから画家になろうと衝動的に思った時のたとえに静かに爆笑しました。
「ブタが美術館に入ったら、ハムの缶詰になって出てきた」
ニューヨーク近代美術館MoMAでピカソ展を鑑賞中のことだったそうです。                          (ホンダタカシ)

2017/09/16 16:31 | 未分類trackback(0)  | top

ACE質問紙を改良する

  児童期逆境体験ACEをスクリーニングする質問紙を作り試行していますが、より広い観点から検討された質問項目が提案されていたので、TIC TT作り直す作業をしています。

  児童期の逆境体験がその後の人生でどれほどの悪影響を体や心に与えているか調査したのは米国疾病管理予防センターCDCでした(以下、CDCと呼びます)。CDCは、身体的虐待、性的虐待など児童虐待5項目、問題飲酒など家族メンバーのなかへち美術館4問題や母親への暴力も目撃など家族機能不全5項目の合わせて10項目について、18歳前の子ども時代に経験したかどうか、さらに後の心と体の健康状態を
を調査しました。
 
  児童期逆境体験ACEをスクリーニングする質問紙は他にもあります。同じCDCの電話調査を目的とした行動リスク要因調査システムBFFSSやWHOによる児童期逆境体験ー国際版ACE-IQ等があります。

 新たな情報は以下の最新刊(のAppendix)から知りました。
Levenson, J. S., Willis. G. M., & Prescott, D. S. (2017). Trauma-Informed Care : Transfoming Treatment for People Who Have Sexually Abused. Safer Society Press.

    この質問紙の項目は、著者の頭文字をつなげてLWP版ACEと呼べば、これはオリジナルのCDC版の10項目に加えて、いくつかの研究成果を元に、いじめ、貧困、地域社会の暴力、差別(不公平・不利な扱い)、施設入所(家庭を離れての養育経験)、医療トラウマ/悲哀/喪失(家族の罹患・受傷)が加えられています。こうした8項目も児童期逆境体験に加えるべきだとの考えです。

 われわれの試行版(ASなかへち1B版)はさら(自然)災害/事故/事件を加えて19項目としました。以下のような質問項目です。
『自然災害((地しんや洪ずい)、大きな交通事故、ひどい事件や火事にあいましたか。またはそんな出来事にあった人を見たことがありますか。TVや写真などをみることは はいりません。』

 児童期逆境体験ACEは子ども時代の体験に限定していますが、身近な家庭だけでなく、なかへち美術館3 地域社会、世界で起こるさまざまな暴力、紛争、葛藤などの出来事の経験が、姿と強さを変えてわれわれに体と心に作用し続けていると言われています。範囲や対象を拡張し、実践使用に向けて試行と修正を繰り返します。

さて。
写真は本文とは全く無関係です。以前にもご紹介した(田辺市立美術館分館)熊野古道なかへち美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/です。田辺インターを降りて、美しい緑の稜線の下をくねくねと曲がる熊野街道(311号線)を走り、中辺路の近露交差点を左折すると、美術館がパッと目に飛び込んできます。大きすぎず小さすぎず、周囲の風景に溶け込みながらも凜として自己主張のある美術館です。その高さが秀逸です。
  建築家妹島和世と西沢立衛の建築ユニット?SANAAによるもので、企画展示もさることながら、美術館も、または美術館こそ鑑賞の対象です。                (ホンダタカシ)

2017/09/01 10:41 | 未分類trackback(0)  | top

二要因レジリエンス・スケールBRSを活用して

  例えば児童期逆境体験ACEなどひどいストレスを伴うとんでもない目に遭った時に、そのストレスに打ちのめされてしまう人がいます。一方で、ストレスは感じながらもなんとかに乗り切っていく人もいます。その違いを説明するもののひとつとして、回復力とも訳されるレジリエンスresilienceがあります。その定義は研究者によって異なりますが、ここではSAMHSA's TICのものを引用します。

海辺
この語は、個人、家族、地域社会、福祉・医療サービス提供者として立ち直り、逆境を乗り越える能力を指す。頑健さという個人の特性以上であって、レジリエンスには困難や逆境、またはそのどちらかの出来事を切り抜けることのできる利用可能な資質の活用プロセスを含まれる。このTIPでは「レジリエンス」という語を適用し、人生全般にわたる個人にとってのプロセスである。(Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57,  p. xⅷ)
  レジリエンスは個人に備わっているものというよらえ方が多いのですが、ここでは個人だけでなく、家族や地域社会にも備わっている能力、ここでは資質resourceとしていますが、この点が注目されます。自然災害を考えれば分かりますが、個人にトンビも家族にも地域社会に対しても過大な影響をもたらし、個人、家族、地域社会がそれぞれがつながりながら乗り越えていきます。

   個人に着目してレジリエンスのを構成する要因を探るスケールがいくつかあります。その一つが「二次元レジリエンス要因尺度(BRS)」(平野真理, 2010)です。
  遺伝的な資質という特性の強い因子である「資質的レジリエンス要因」と後天的に獲得された特性である「獲得的レジリエンス要因」の二次元から構成されます。

  「資質的レジリエンス要因」には社交性、楽観性、自己統制力の各要因からなりますが、自己統制力には不安など感情をコントロールする力と自己意思を実行をコントロールする力の二つからなります。
   「獲得的レジリエンス要因」には、他者理解・自己理解、問題解決指向ガあります。他者理解・自己理解は、双方が関連し合いながら発達すると考えられます。
  先行研究をもとに統計的に解析された結果、7つの要因が取り出されました。
  各要因について3問ずつ質問があり、合計21問用意されています。例えば「社交性」についての一つは、

1.自分のほうから人と親しくなるのが得意だ。

こうしたの質問について、①まったくあてはまらない から⑤よくあてはまる までの5件法で回答し点数化されます。かといって、点数でレジリエンスがあるなしを決めるものではありません。夏の終わり

 いきなりレジリエンスのスケールですと言ってもほとんどの人はご存じないのでその定義を伝えたうえで、「自分の良いところ探し」みたいなもので長所を探します、と説明します。雑に言えば自分のウリ、福祉的に言えばストレングスに気づくことです。

 レジリエンスはストレングスと同じ意味ではありませんが、非常に近い関係にあります。その逆が、多分脆弱性vulnebitity。 強いストレスを経験した人にとって、レジリエンスやストレングスがそこからの離脱や回復surviveする起点になるのではないか、と考えています。

平野真理 (2010). レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成  パーソナリティ研. 19, 94–106.



さて。
鳥が飛んでいるような写真は、実はトンビかタカをイメージした凧で、夜久野高原の葡萄畑上空を旋回?して警戒にあたってます。                 (ホンダタカシ)

2017/08/18 20:05 | 未分類trackback(0)  | top

The Captain Is Out to Lunch and the Sailors Have Taken over the Ship.

ブコウスキー1   チャールズ・ブコウスキーの『死をポケットに入れて』(中川五郎 訳、ロバート・クラム  画、河出文庫)の原タイトルです。「船長は昼食に出かけ、船乗りたちが船を乗っ取ってしまった。」(文庫本p.218)との訳ですが意味が?です。

 1920年8月16日まれのブコウスキーの71歳から73歳までの33の日記です。このタイトルは、『93年2月27日 12:56AM』とある日記の最終章の冒頭の文にあります。それに続く文は脈絡なく、

おもしろくて興味深い人間は、どうしてほとんどいないのか?

と始まって、日常生活を送るのに『まぬけな野郎』と罵倒する人々と交流せざるを得ないと悪態をつき、ページをめくるとクラシック音楽、たぶんマーラーを3、4時間聞いている。映画から作家の話題に転じ、彼らの作品は読むのに苦労する。作家には文体というものがなく、冒険心もなく、精ブコウスキー2気も炎もないとこき下ろし、憤懣、苛立ちをつなぎとして、話題が次々に切り替わります。

 作家としての自分の言葉に勢いがなくなれば、原稿の上にワインを注ぎ、火をつける。屑かごが燃えたら、たっぷりとビールをかける。そのあげく、届いた読者?からの手紙に毒づいて、
  ・・・それにわたしはトルストイだって嫌いだ!

でこの章、つまりこの日記は終わります。日記? 文を書く自分を丹念に虫眼鏡でみている自分をブコウスキーが実況中継しているように思えます。
クラシック音楽、葉巻、コンピューターが、文章を踊らせ、わめかせ、大声で笑わせてくれる。悪夢の人生もまた手助けしてくれる。

 邦題はヘミングウエイに始まる91年9月12日11:19AMの日記(p.20)のなかで、死に対する用意ができていない人が多いけれど、私は『死を左のポケットに入れて』、ときブコウスキー4には取り出して話しかける。
 「やあ、ベイビー、どうしてる? いつわたしのもとにやってきてくれるかな? ちゃんと心構えしておくからね」

 71歳のちゃめっ気。
 タイトルにあるOut to Lunchには「酒・麻薬で〕正気を失った」という別の意味ももあります(英辞郎o on the web)。船長はブコウスキー自身だとしたら船乗りたちって誰のこと?振り落とされないように必死で安全バーをつかんで読む日記です。なかなかやめられない。

 はじめてブコウスキーを読んだのは柴田元幸 訳『パルプ』(ちくま文庫)です。文庫本腰巻きにあるとおり、私立探偵ビレーンが一人で立ち回るの傑作怪作です。探偵小説だと思って読むとぶっ飛びます。依頼人には女死神やら美女宇宙人やら。この暑さなんてなんのその。
 つぎは、藤原新也のカバー写真が魅力的な、青野聰 訳『町でいちばんの美女』(新潮文庫)です。         (ホンダタカシ)




2017/08/04 19:21 | 未分類trackback(0)  | top

PTSDチェックリスト(PCL)

  児童期逆境体験(ACE)のスクリーニングを行った結果ある項目が該当した時、つまり陽性であった場合、次の段階であるアセスメントに移行します。

 これまでの各分野のアセスメント結果や生活歴、支援の経過などの見直しが必要になりスーパー ます。これまで明らかにならなかったけれど、子ども時代にトラウマ症状をもたらす体験があったかもしれない、との観点で見直します。これだけでも大変な作業です。対象者はだれにも気づかれないままに、その症状や障害で困っている状態が続いているので、そんなに時間をかけてよいものでもありません。

  欠かせないのが、PTSD症状があるかないか、あるとすればどの程度かのチェックです。そのチェックをするツールとして「PTSDチェックリスト(PCL)」を選びました。SAMHSAのTrauma-Informed Care in Behavioral Health Services. TIP 57のp.108-110に紹介されています。このリストもスクリーニングのためのツールで、これだけではPTSDの診断は出来ず、あくまで補助的なツールです。

 DSM-5にあわせた最新版は、National Center for PTSDhttps://www.ptsd.va.gov/から得ました。ここはU.S.Department of Veterans Affairs(退役した軍人やその家族を対象とした政府機関)の一部門のようです。PTSDの研究がベトナム戦争をきっかけに進んだことと無縁ではありません。
 
 IES-R (Impact of Event Scale-Revised) など日本において標準化されたスケールもありますが、知的障害者への適用も考えると表現などに工夫が必要なので、The PTSD Checklist for DSM-5(PCL-5, 14 Aug. 2013) を平易で分かりやすくなるよう訳しています。正確さを確実にするた旗めには逆翻訳が必要ですが、そこまではなかなか。

 このチェックリストの教示は以下のように始まります。
   Below is a list of problems that people sometimes have in response to a very stressful experience.
  「これは問題のリストです。ストレスのたいへん強い経験をした人に ときどきある反応です」

 こういった具合で訳します。関係代名詞thatを入れて訳すと、文の構造が複雑になり理解を妨げるおそれがあるので、2つの文に分けて訳しました。
 問題は、very stressful experienceです。直訳の「たいへんストレスの多い経験」では心的外傷をもたらすほどの大変さが伝わりにくい。今のところ、下線部のようにしました。これでもまだしっくりきません。

 教示はさらに「この一月間、その問題にどれくらい悩まされたか、あてはまる番号を丸でかこんでください。」と続きます。「悩んだか」でもいいように思いますが、原著も英文法でいうところの現在完了形の受動態です。「高卒後の進路について悩んだ」のように主体的に悩んだわけではなく、主体は「あなた」でありながらも、トラウマをもたらすようなストレスのたいへん強い経験に対しては受け身でしかなかった、との意味かと思います。

 他にも悩む箇所はいくつかありまた。正確で、平易で、分かりやすい飜訳は難しい。
 本文と写真は全く無関係です。       (ホンダタカシ)

2017/07/21 17:49 | 未分類trackback(0)  | top

田辺市美術館など

 「熊谷守一 書と絵と肖像」展を見るために田辺市美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/bijutsukan/へ行きました。熊谷守一を見るの田辺市美術館1 は3回目でしたが、今回はタイトルにあるように書と写真が多いのが特徴です。装飾のようにもみえる単純化され平板化された油絵とは違って、ダイナミックさは同じですが濃淡が強いのが印象的な書です。知っているけれどみたことがない字、読めない字だけれどこれじゃないかと思える言葉です。

 美術館は折り紙で作った箱をいくつかつなぎ合わせたようにみえる建物です。裏から見るととても美術館には見えないけれど、じゃ何かと問われると困ってしまうような建物です。豊島区立熊谷守一美術館http://kumagai-morikazu.jp/、熊谷守一つけち記念館http://www.morikazu-museum-tsukechi.jp/に比べると、公立ですが建物の個性が際立つ美術館です。ドアの取っ手の意匠が目を引きますが、館内はいたってオーソドックスです。
田辺市美術館2
 この美術館の分館である熊野古道なかへち美術館http://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/index.htmlも魅力的です。紀伊半島のほぼ中央です。金沢21世紀美術館を手が岐阜県美術館けたSANAA(妹島和世と西沢立衛による建築ユニット)の最初の美術館だそうです。

 館内にあった美術館のパンフレットはどれも楽しいものです。  「ナンヤローネ」と題した岐阜県美術館http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/のパンフレットは月ごとに司令のかかれた楽しい月めくり式の催し物案内です。
 7月の司令は「日本画の逆襲を目撃しよう。」難しいなあ日本画は、という感想を追い出すような司令です。8月は「熊谷守一を『モリカズ』と呼ぼう。」です。熊谷守一は結構人気ですね、お名前を呼び捨てにするのは畏れ多い。
 月ごとにいくつかの展示が案内されていますが、右端にMEMOとあり画家の誕生日が載っています。今日7月7日は七夕などではなく、シャガールの誕生日!

 館長さんは日比野克彦!とあります。ここも期待できそうです。このパンフレットのデザインもひょっとしたら・・・。      (ホンダタカシ)

2017/07/07 09:59 | 未分類trackback(0)  | top

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