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荷風のローライ

 二眼レフのローライはなかなか楽しいフイルムカメラです。6センチ×6センチ(実際はほんの少し小さい)の正方形のフイルムサイズで、12枚撮りです。写真のローライには接写用のローナイナーをつけています。

Rolleiflex.jpg
  永井荷風は昭和11年10月26日(1936)にカメラを買ったことを「断腸亭日乗」に書いています。
「午後より時々驟雨あり。草稿を添削す。夜久辺留に往く。安藤氏に託して写真機を贖う。金壱百4円也。」

  この写真機がローライ・スタンダードであると田中長徳さんの本に載っています。1930年代のモデルだそうです。ちなみに「驟雨」はにわか雨、「草稿」はその前日に『濹東綺譚』脱稿とあるのでそのことでしょうか。「久辺留」とはキュペルといいう喫茶店でよく出てきます。「104円」がどれほどの価値かのかはわかりませんが、かなりの高額かもしれません。

 その後の12月9日、草
「年末に至り新聞記者出版商人等の来訪するもの多からむことを虞れ、昼飯を食して後直に写真機を携え亀戸に至り、大嶋町羅漢寺前大通りを歩み、・・」  

翌日12月10日、 「午前読書春水人情本午後写真機を携えて浅草公園に行く。」
 年が明けての昭和12年1月16日、
「家にあらば訪問記者に襲はるるが如き心地したれば、昼飯を喫して直に写真機を提げて家を出づ。」
 2月3日、
「家に至るに名塩君来りカメラ撮影の方法を教へらる。」
そしてとうとう5月12日には、
「帰宅後写真現像を試む。」

  その後、母親の亡くなった4日後の9月13日「午後写真機を提げて・・」、10月4日「写真焼附」。
昭和13年正月2日「帰宅後写真現像」、三月初五「・・浅草オペラ館に赴き楽屋及び部隊を撮影す。」

 浅草、玉の井、銀座への散歩にはローライをぶら下げて?倒木 いたようです。撮影だけでなく、現像、焼付まで行っていたようです。ペンキ塗りの偏奇館に暗室があったのか、それとも風呂場か台所を真っ暗にして暗室代わりとしたのか。撮った写真の一部は、「おもかげ」という小説随筆集に収められており、国立国会図書館デジタルコレクションhttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1261446で見ることができます。
   
 「反時勢的傍観者的な姿勢」(解説)と評される荷風ですが、しばしば外出に携えた「カメラ」は何をもたらしたのか。完読までの楽しみの一つです。

 それにしてもこの『断腸亭日乗』も武田百合子『富士日記』にしても食べる話は必ず書かれています。荷風はどこで食べたか、武田百合子は何を食べた、という違いはありますが。 

永井荷風(著)磯田光一(編)「摘録 断腸亭日乗」上下 岩波文庫(1991)  
田中長徳(著)「二眼レフカメラ ワークショップ」枻出版社(2009)  
    
                               (ホンダタカシ)

2019/04/24 08:40 | 未分類trackback(0)  | top

重版を作る

Fp.jpg  『性問題行動のある知的障害者のための16ステップー「フットプリント」心理教育ワークブック第二版』を今年2月に重版しました。かなり狭い分野を対象としたものですが、たくさんの方が手に取っていただき大変うれしく思っています。
 本が売れて最初に印刷した部数が足りなくなった時、そのまま増刷されるかそれとも重版されるかです。重版とは文字通り版を重ねることで、最初の版のままのこともあれば手を入れることもあるようです。活字離れや出版不況がいわれ、足りなくなったら増刷、重版というわけではないようです。一方で読みたい本が手に入らないといったこともあります。



  重版を機に本書を点検してみると、校正漏れ、誤解しやすい文章、わかりにくい表現などがありました。今回の重版では10箇所程度を修正しました。決してほめられたことではなく、初版を購入された方には大変申性問題支援ガイド:カバー最終案し訳なく思います。



 今月に入って、『性問題行動のある知的・発達障害児者の支援ガイド――性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック』の重版作業にも取りかかりました。この本では、訂正や改良だけでなく、出版後のわれわれの研究や実践の広がり深まりを踏まえたものにしたいと思いました。ここでもたびたびご紹介している児童期逆境体験ACEsなどによるトラウマがどのように影響し、性加害行動/問題行動への支援にどのように取り 組めばよいか、こうした点を盛り込みたいと思いました。



 しかし、あまりに多くを加筆すると初版との違いが大きくなり、さまざまな点でバランスが崩れます。このあたりの判断が難しいところです。また、どちらの本にしても、どこがどのように変わったのかは、初版と重版後をつき合わせないとわかりません。読み手に親切とは言えないところです。申し訳ありません。



鍵
 モールス信号の練習を始めました。トン・ツーというやつです。アルフアベットもひらがなも短点と長点であらわします。例えば、SOSだと、・・・ ーーー ・・・です。写真の黒のレバーのついたものが電信用の鍵で、親指と人差し指ではさむようにして短点と長点を打ちます。横振りとかパドルと呼ばれます。その右はインターネットの記事から作った練習機で、鍵に合わせてプープーと音がでます。実際に電波を出すためには三級のアマチュア無線技士の資格が必要です。そのためにはまず受験勉強。
  (ホンダタカシ)

2019/03/10 09:00 | 未分類trackback(0)  | top

「眺めること」について

 フロイトは『性理論3篇』のなかで、性的な逸脱を性対象の逸脱と性目標の逸脱とに分けました。「性的な魅力を発揮する人物」を性対象、「性欲動によって引き起こされる行為」を性目標と呼びました。それぞに逸脱があるとしました。

 性目標の逸脱の中に「触ることと眺めること」があります。それらが中途の段階であれば逸脱とは言えませんが、身体の器官に限定されたり、通常嫌悪されるものに向けられたり、性目標を押しのけたりする場合、フロイトは性目標倒錯であるとしました。
ラジオ
 さらにフロイトは、この倒錯では能動性と受動性という二つの形式からなっている、と指摘します。つまり「見る」ことと「見られること」。見ることは見られることによって成立するのです。もし、フロイトの指摘した通りであれば、窃視障害(DSM-5)に考えをめぐらすとその障害の全く別の側面が見えてきます。とりわけ加害であればなおさら。

 加害として窃視は、当然その行為は露見しないことが前提です。ところがその心理的には窃視が見られる、つまり気づかれないことには成立しないことを意味します。気づかれないはずだという勝手な思い込みがある一方で、見ていることを知ってほしい。加害としての窃視はこうした矛盾が隠されています。

 阿尾日記 ラジオ編
  阿尾の家ではいつもラジオを聴いています。PCやスマートフオンではなく、中華ラジオと呼ばれているトランジスタラジオを買いました。選曲つまみを指先の感覚をたよりに放送局の周波数に合わるのではなく、DSPラジオなのでプッシュボタンとデテントボリューム?で簡単に選曲できます。対岸の徳島の四国放送はもちろんのこと、夜になるとニッポン放送がよく入ります。受験生気分です。トランジスタラジオをききながら、熊野詣での本を読むと気分はもう熊野の森の中です。


                    ジークムント・フロイト 中山元(編訳)(1997)  「エロス論集」ちくま学芸文庫                      (ホンダタカシ)

2019/02/01 09:51 | 未分類trackback(0)  | top

猪 熊楠の『十二支考』

 本年もよろしくお願いします。
熊楠1
 水木しげるの「熊猫」を読み終えて、熊楠と猫をテーマにした本、「熊楠と猫」南方熊楠・杉山和也・志村真幸・岸本昌也・伊藤信吾(2018)  共和国(出版社の名前)、という珍しい本を手に入れました。
 猫に関する論考、俳句、手紙などが載っていますが、目を引いたのは筆で描かれたと思われるたくさんの猫の絵です。猫の体温を感じさせるやわらかな身体の線が墨の筆で生き生きと描かれます。猫好きでたくさんの猫の絵がありますが、いわゆる猫かわいがりではなく観察対象でもあったようです。時に邪険にあつかったともあります。

 動物に対する最も有名な論考は、「十二支考」南方熊楠 板倉照平(校訂) 平凡社東洋文庫 全三巻、です。今年の干支である猪について熊楠は民族学、人類学をはじめとしておびただしい数の図書を駆使して論述します。その解説によれば、例えば『蛇に関する民族と伝説』の章では「引用書目およそ142種、英54、日50、漢26、仏6、羅2、伊2、独2」とあるそうで、語学力もさることながらその博覧強記ぶりはすさまじい。

 『猪に関する民族と伝説』(第3巻)は、干支は亥(イノシシ)であるが大陸の猪は豕(ブタ)のことであるとの説の紹介から始まります。古くは豕の子を猪(和訓でイノコ)、豚といい、さらに野生の猪を野猪または山猪といい、家で畜った(かった)のを家猪と呼んでそうです。

 豚をブタと訓んだのは明の時代、室町時代から江戸時代初期の頃で、広島や京都では家猪として飼われいたという。太っていることを形容する言葉としても使われていたらしい。

熊楠2  続けて、アリストテレスやプリニウスの著作にもあるとありますが、猪が蛇を食べるテーマと転換し、猪による毒蛇除けの伝説へと移ります。
 さらに、1915年版のルーマニアの動物伝説を記した書籍から紹介される話もあります。方舟で有名なノアが葡萄を植えていると天魔(悪魔の一つ?仏教語?)が来て山羊の血、獅子の血、豕の血をその根に注いだ。後に、「チョビッと酒を飲むと」山羊のように跳ね回り、「おいおいに」飲むと熱くなって獅子のように吼え、「飲みまくって、・・泥中に転げ廻って、汚れも気にせず、猪の所作をする」と。

 世界のさまざまな文献から、猪の伝承やその土地その時代の人と猪のつながりに始まって私たちの世界観が息つく間もなくつむぎだされていきます。高速回転するメリーゴーラウンドに乗っているように楽しくてワクワクする読書体験ですが、振り落とされないようしがみついているが大変です。

 物質使用/濫用などアディクション(嗜癖)の治療や支援でよく見かけるKhanzian(1985)の自己薬物治療仮説について書こうと準備しましたが、それは次回にまわして、滅法面白い熊楠のお正月らしい話題としました。              (ホンダタカシ)

2019/01/03 16:30 | 未分類trackback(0)  | top

クリスマスバージョンのSST

SST/ソーシャルスキルズトレーニング
クリスマスシーズンということで
ハーバリウムボールペン、リース作り、ツリー作りを自由にしてもらいました。
このような創作活動の目的は雑談をする、自己表現の場、周りをみること、達成感など様々。
黙々と作業をする学生さん、作品を認め合いながら作業する学生さん、喋り続けるわたし(笑)、お菓子を食べながらなのでいつもよりリラックスしている学生さんなどなど。
雰囲気は良かったです。
学生さんからのコメントでSSTして声が大きくなり笑うことが増えたとご家族に言われたとあり心理の先生もわたしもすごくうれしいひと時でした。
許可を得て写真掲載しています。

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(正井佳純)

2018/12/20 23:27 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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