わかりやすい文章を書く

以前に『性問題行動のある知的障害者のための16ステップ ー「フットプリント」心理教育ワークブックーFootprints : Step to a healthy life. )』をご紹介しました。この本は対象となる人が実際に読みながら与えられた課題を書きこむようになっています。そのために読みやすくわかりやすい表現にする必要がありました。
 知的障害者が利用することを想定したものは、ルビをふればよいと言われることがあります。ルビは確かに手段のひとつですが、それだけでわかりやすくはなりません。文字の大きさやレイアウトにもよりますが、ルビをふると紙面が文字ばかりになってしまい、黒々としたものになってしまいます。文字ばかりの視覚的なイメージとなり、それだけで読む気をそいでしまいかねません。Fp表紙Blog用

 まず心がけたのは、わかりやすい文章にすることでした。もとの英文が透けて見えそうな翻訳の調子になりがちでした。それをできるだけ単純な構造の文章にし、文章もできるだけ簡潔にしようと試みました。

 例えば、原著の23ページの題はこうです。
  STEP 2 Counseling:What is it, and why ?
直訳すれば、「カウンセリングとはなんですか、なぜ受けるんですか」というところでしょうか。翻訳ではこうしました。かなりシンプルです。『ステップ2  「カウンセリング」ってなんだろう ?』

 その冒頭はこうです。
 Counseling is talking with a person who knows how to help you with your problems. A counselor has special training in how to heip. Counseling is a good way to stop wrong sexual behavior or wrong touching.
カウンセラーには援助の技術があり、そのために訓練も受けており、その援助を受けることがあなたには必要だ、ということを伝えるためにこのように翻訳しました。
  『カウンセリングとはカウンセラーと話しあうことです。カウンセラーは、あなたが問題をのりこえていくために、なにをすればいいか、あなたをどうやってたすけていけばいいか、きちんとしっています。まちがったタッチをやめるために、カウンセリングをうけましょう。』”援助”を具体的に説明しています。”wrong”を良いに対する”悪い”ではなく、修正は可能だという意味をこめて”まちがった”としています。

 漢字にはルビをふることを原則にしました。この例でもわかるようにできるだけ漢字を減らしてます。例えば、”歩く”は”あるく”としています。平易という理由だけで漢字は残しませんした。しかし、”話しあう”とか”思う”なaiai.jpgど使用回数も多く慣用的なものを中心に漢字を残しました。また、ひらがながつづくとみづらく、ひらがなのおおいぶんしょうをわかりやすくしようとすると、くとうてんが、ふえすぎるからです。

 以前には、ルビに加えて分かち書きも導入したこともありました。るびだけで いいのか、それとも わかち書きをも へいよう したほうが いいのか、はんだんの むつかいしい 問題でした。 (大阪府社会福祉協議会 大阪後見支援センターあいあいねっと『みんなに役立つあいあいねっとのケースブック』、『日常生活支援事業のわかりやすいパンフレット』http://www.osakafusyakyo.or.jp/kouken/life_support.html

 また”問題”のようにまとまりとして理解しやすい熟語は残しました。熟語はかたまりとした方がわかりやすいからです。ただし、抽象度の高いものはやさしい表現に変えました。
 プログラムの組立や内容をきちんと伝えるために、抽象的な語を平易にしながら、かなと漢字を使い分け、シンプルで簡潔な文章にするという作業でした。その結果、対象を限定せず幅広く使えるものとなったと思います。

 いま出されている本、雑誌、新聞のほとんどが知的障害者などを読者と想定してしているわけではありません。それに対してやさしく読めることの必要性を訴えているのがこの本です。
  藤澤和子・服部敦司(編著) (2009) LLブックを届ける:やさしく読める本を知的障害・自閉症のある読者へ. 読書工房
この巻末には、やさしく読める本のリストがあります。
 そのひとつとして、「全日本手をつなぐ育成会」によるだれにとってもわかりやすい新聞『ステージ』があります。http://www.ikuseikai-japan.jp/books/books02.html ちょうど一年前のものですが、『ステージ 48号 2008年12月』では、第1面はお雑煮の作り方、第3面はオバマ大統領の誕生とリーマンショックがわかりやすく簡潔に報じられています。
 これらは情報へのアクセシビリテイを高める試みといえるでしょう。 本多隆司 

2009/12/04 15:25 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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