不連続シリーズ:もうひとつの社会福祉の現場(その4) グループホームでの認知症の人たちの生活

 80歳くらいの女性が訪問した私たちみんなにお茶を入れてくださる。すかさず横から「この人が入れるお茶が一番おいしい」と、「よいしょ」がとんでくる。するとその女性は、本当にうれしそうににこにことうなずいている10人で訪問したので、その女性はお茶をいれるのに忙しい。でも、自分がお茶を入れたことや、何人分入れたかについては覚えていない。「もうこれでおおきに」というと、お茶をいれるのをやめて居間の椅子にすわった。

 訪問したのはちょうどお昼ご飯がすんだ午後1時すぎであった。家庭の居間よりちょっと大きめのスペースにテーブルが二つおいてあり、高齢者の女性がテレビをみたり、うとうとして過ごしている。おだやかな雰囲気がただよっている。訪れたのは大阪府箕面市内にある認知症の高齢者9人がいっしょに生活している、いわゆるグループ(NPO法人が運営する「あそびりクラブ 西小路の家」)である。介護保険制度の「認知症対応型共同生活介護」サービスである
 ここの生活は日課などは決められておらず、基本的には利用者のペースにあわせている。朝、起きてくる時間も一人ひとり違う。早く起きてくる人もいれば、ゆっくり寝ている人もいる。だいたい毎日8時ごろに朝食をとる。床の掃除、買い物、調理、盛り付け、配膳、後かたづけ、洗濯ものをたたんだり、要するに毎日決まった家事をみんなでいっしょにやっている。もちろん義務や強制ではなく、スタッフが「できないが、どうしょうかな」と困った様子をすると、「しゃーないなあ」と言って手伝ってくれる。長年、主婦だった人は、家事はスタッフより上手な人たちばかりである。そうすることで、日中、身体を動かすことが多いため、夜はぐっすりと朝まで眠る。また、右脳をしっかり使う生活を過ごすことで認知症の症状を遅らせることができるのだという。
 グループホームは2階建ての2階にあり、屋上には家庭菜園があり、スタッフと利用者がきゅうりやなすびなどの野菜も育てている。育てた野菜はおかずになったりしている。1階は、家主の精神科のクリニックが入っている。

 先ほどお茶を入れてくれた女性は、以前いた企業が運営するグループホームでは自分の部屋からほとんど出ず、「早くお迎えがきたら」と生きる意欲をなくしていたが、ここに移ってきてからは、毎日にこにこ楽しく過ごすようになったと横にいた娘さんが話してくれた。そんなこんなで、利用したいと待っている人が現在10人いる。また、介護現場の人手不足はどこでも聞くが、なんとここは職員として働きたいと待っている人までいるという。高齢者介護の仕事をめざす人にも人気のあるグループホームである。
 
 それでなんで10人もこのホームにおうかがいしたかというと、地域の人たちも加えてホームの運営について考える会議(運営推進会議)を2カ月に1回持つことになっている。そこで市の地域密着型サービス・地域包括支援センターの委員をしている私と市の職員、民生委員、老人クラブの代表、地区福祉委員、利用者の家族、地域包括支援センターの職員などが参加して会議が開かれたのである。
                                                                 (明石隆行)

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2010/02/15 00:21 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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