不連続シリーズ:社会福祉のもうひとつの現場(7) 縁の下の力持ち

 玄関を出ると金木犀のあまい香りが漂ってくる。近くの小学校の外庭には彼岸花が咲いている。しばらく行くと住宅の塀からは柿の実がのぞいている。緑地公園の入り口に着くと、7種類160株の萩が900mにわたって植えられている。明けてくる空にはイワシ雲が浮かび、「キーッ キーツ」と百舌鳥の鳴き声が響きわたる。半袖では少し寒いような朝である。あの猛暑はどこにいったかと思う。ようやく秋らしくなってきた。


 今、市町村や都道府県の福祉部局では今年の12月に、3年に一度、全国一斉改選される民生委員の厚生労働大臣への推薦に向けての作業が行われている。今年の猛暑では熱中症が高齢者を襲ったが、100歳以上の所在不明の高齢者の問題も噴出した。テレビのニュースでは、所在不明の高齢者の安否確認のため、民生委員による訪問活動がとりあげられていた。民生委員の活動がこれほどテレビでとりあげられることもあまりなかったのではないかと思えるほどであった。
 こうしたこともあり、それでなくても民生委員のなり手がないのに、民生委員の仕事は大変だと敬遠する人が多いとかで、推薦に困っている市町村もあるようである。


 民生委員は、厚生労働大臣の委嘱を受けて地域で福祉活動を行う民間人である。活動に対する報酬がないという意味ではボランティアといってもよいが、民生委員法に基づいて活動が規定されていることと、福祉各法によって福祉事務所や児童相談所等の福祉行政への協力が義務付けられている点がボランティアと大きく異なるところである。ボランティアは自分の意思で自分の好きな活動を自由にできるが民生委員はそうではないのである。
 会社員の人もいれば自営業や主婦の人もいる。教員や公務員を退職した人や住職などもいる。つまり、市民が民生委員になっており、身分的には非常勤特別職の地方公務員(無給)である。任期は3年である。


 民生委員の活動は非常に多様である。福祉に関する相談に応じることはもとより、一人暮らし高齢者の安否確認(見守り活動)、児童虐待の通報、子育て支援、生活保護や生活福祉資金の貸し付けについての書類作成など、さまざまな業務がある。もちろん自分の仕事を持っているわけであるから、仕事が終わった後や休みの日に活動を行う。自分の時間をさいての活動というわけである。それだけでなく、住民の相談に応じることから、福祉の考え方や福祉制度のことについても自ら日々研鑽を積むとともに、行政が主催する研修会にも参加して知見を広める努力をしている。
 さらに、民生委員をしている人は、自治会や町内会の役員を兼務していたり、中には保護司をしている人もいたりする。

   
 高齢社会になり、一人暮らしの高齢者、老々介護、児童虐待や高齢者虐待、所在不明の高齢者、孤立死、生活保護受給者の急増など、地域には新たな福祉課題が山積している。所在不明の高齢者問題に象徴されるように、行政の目が届きにくいようなところを支えているのが民生委員の活動である。このような民生委員の活動は住民にも意外と知られていない。いうなれば、地域における縁の下の力持ちである。その存在はますます重要性を増している。





(明石隆行)

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2010/10/11 00:51 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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