読書の秋に犯罪を読む

殺人者達の午後  「殺人者の午後」という本を読み終えたら、そこに登場する人たちのことをだれかに伝えたくなりました。トニー・パーカー(著)、沢木耕太郎(訳)、飛鳥新社(刊)2009。

 著者のトニー・パーカーが殺人を犯し服役中、あるいは仮釈放中の受刑者に長時間インタビューしたノンフイクション作品です。
 「第三話 とんでもないことが起きてしまった」では、自分の子どもを殺したフイリップが、それまでの生活から結婚のいきさつ、事件当日を語ります。『裁判官は俺に終身刑(ライフ)を与えた』といって刑務所での生活を送った後、殺した子どもの姉ルーシーの子ども、つまり孫に会いますが、保護観察官ポーリーンから二度と赤ん坊と二人っきりになるなと申し渡され『ザラッとした砂を口いっ犯罪ぱいに突っ込まれたような』気になります。そして、さりげないエンデイング。全十話です。
 原題はLife after Life。lifeは「人生」で意ですが、後ろのlife(sentence)は「終身刑」を意味します。英国には死刑がなく、重罪は終身刑になり、終身保護観察官の関与をうけます。
 主人公によって文体を変えた巧みな翻訳で、高村薫の新聞書評にあったように「たったいまイギリスの街角で彼らとすれ違ったかのような夢想に陥り」ます。カバー写真はハービー・山口の雰囲気写真。

 「犯罪」は、小説家にして弁護士の著者が淡々とかつ克明に犯罪を小説とした本です。フエルデイナント・フオン・シーラッハ(著)、酒寄進一(訳)、東京創元社(クリステイ刊)2011。「殺人者の午後」同様、現実感は強いのですが、日常的な印象がどこか薄く感じます。原題のVerbrechenはドイツ語で犯罪の意、直球です。

 先頃、龍谷大学で講演したオスロ大学のクリステイは、本の冒頭で『犯罪は存在しない。ただ行為が存在するだけである。』、『その意味は作られるのである。…犯罪は、文化的、社会的、精神的プロセスの産物である。』と書いておられます。犯罪を知ることはわれわれの住む社会を知ることです。
 「人が人を裁くとき ー裁判員のための修復的司法入門」。ニルス・クリステイ(著)、平松毅・寺澤比奈子(訳)、 有信堂(刊)2006。原題のA Suitable Amount of Crimeとは犯罪の適度な量、つまり犯罪に課せられる刑罰の適切な量が論じられます。『刑罰は苦しみを与える行為』であるから。薄い本ではあるけれど、ここですべてをご紹介するにはあまりに論点の多いエキサイテイングな本です。またいづれ。
刑務所図書館の人ひ#12441;と
 最後に、「刑務所図書館の人びと ーハーバードを出て司書になった男の日記」アビイ・スタインバーグ(著)、金原瑞人・野沢佳織(訳)、柏書房 (刊)2011ですが、そんな仕事があるんだと題につられて買いました。Running the Books:The Adventure of an Accidental Prison Librarian。副題にあるように、たまたま刑務所図書館司書になった人の冒険譚、でちょっと軽い。途上です。

 原題はどれも著者の強い思いが正確に伝わり、邦題は読者への訴求力が重視されています。    (本多隆司)


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2011/10/14 10:24 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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