最良のライフライン

 愛犬家にとって犬は動物ではなく家族同然だ。その家族である愛犬に急死された74歳の男性が早朝のラジオ体操にこなくなった。犬と散歩している犬友を見るのがつらい。かといって代わりの犬をすぐに買うこともできない。悲嘆からなかなか抜け出せないからであった。
 
 今朝、その男性が愛犬をつれてラジオ体操をしているのを見かけた。笑顔でいきいきとされている。以前の愛犬とよく似た小型の犬種である。聞いてみると、その方のご近所で犬を飼っておられた一人暮らしの70歳代の男性が亡くなられたので引取ったそうだ。玄関先の新聞がたまっていて、犬が時々鳴いているのを不審に思ったご近所が民生委員に連絡したところ、亡くなられていたのを発見したという。誰にも看取られることなく旅立ち、何日間か経ってから発見される、いわゆる孤立死であった。

                      (「犬友」さんたちのつながり)
縮小版 犬友さんたち
                

 私の住んでいる町は地域福祉の取組みが進んでいるが、それでも孤立死があとを絶たない。愛犬家の多くは、「犬友」がいて、近況を話し合ったり、何らかの交流もあるそうだが、この孤立死をされた方は「犬友」がいなかったという。

 とかく孤立「死」が問題としてとりあげられがちであるが、孤立「死」するまでには長期間の孤立した「生」活がある。いいかえると、地域から孤立していた生活をずっと送っていた「孤立生(こりつせい)」が問題なのである。

 中高年の孤立死には、①社会的孤立 ②慢性疾患 ③低所得者 の際立った特徴があげられる。これら3つの特徴を持っているのが「一人暮らしの中高年の男性」である。これは阪神淡路大震災の仮設住宅で頻繁に起こった孤立死の分析からの指摘である。孤立死防止には「結局、毎日毎日の単調な生活の繰り返しの中で力を発揮するのは、なんといっても住民相互の持続的な人間関係である。」「人間関係こそがこの世の最良のライフライン」であると締めくくっている。(額田勲『孤独死 被災地で考える人間の復興』岩波文庫 2013年)
(明石隆行)

関連記事

2013/05/06 23:08 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |