人にはこんな能力がある

 先回ご紹介したこの本は、学術書のようでもあり読物のようでもある不思議な魅力のある本です。R0015881.jpg
ジョージ・A・ボナード(著)高橋祥友(監訳)(2013) 「リジリエンスー喪失と悲嘆についての新たな視点」金剛出版

 この本によれば、リジリエンスresilienceとは、
「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」
と定義されています。ここで取り上げられている極度に不利な状況とは、身近にな人との死別です。

 事故、病気、災害、戦争、テロなどが原因で、あれこれ考える間もなく、あるいはゆっくりと死別を迎えます。そんなとき、悲嘆に圧倒される人がいる一方で、悲嘆を示し、時には怒りをもふくみながらも、それらに耐え、健康な生活をおくる人もいます。

 興味深い研究が紹介されています。「高齢夫婦の生活の変化に関する研究 Changing Lives of Older Couples」http://www.cloc.isr.umich.edu/index.htm 
  ここでは、約1,500人に対して10年近くフロオーアップされました。その間の配偶者を亡くした人もおり、死別後の生活について面接されました。
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 夫であれ妻であれ残された者は悲嘆しますが、その後の生活はそれまでの生活の質に左右されるに違いないと思ってしまいますが、調査結果は全く違います。

 「生前の特定の夫婦関係が、死別に際してより健康な形をもたらすという一般的な法則性はない」(本書、p.95)ある意味、驚くべき結果です。

 「他者との関係は、その人が亡くなったことにうまく適応できるかどうかをかならずしも決定するものではなく、喪失に巧みに対処するのに例外的な人である必要もない」(本書、p.96)つまりリジリエンスはだれにも備わっている?

 では、リジリエンスが”発揮”される人とそうでなR0015878.jpgい人が異なるのはどこか。
 そのひとつに「愛着」があげられています。ボウルビイのいう「愛着」のスタートは、養育者との情緒的結びつきです。さらに他者に親近感を感じ、他者といることが安全だという感覚を感じることです。
 「安定した愛着を築いた人は、悲嘆を巧みに対処し、死の恐怖に圧倒されることも少ない。」(本書、p.168)

 ただし、愛着だけが本書(全270頁余)の結論ではありません。このあと、亡くなった人との絆をテーマに、来 世や輪廻などの宗教的観点、中国などにおける悲嘆の儀式などが論じられます。かなり短縮したご紹介なので、関心をお持ちならご覧になってみて下さい。

 このリジリエンスの逆は、脆弱性vulnerabilityとよばれます。前者を強みとすれば、これは弱みです。逆境の影響を受けネガテイブな結果におちいりやすいことを言います。加害者や非行児の指導に関連した文献によく出てきます。 (本多隆司)



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2013/07/19 10:08 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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