持続可能空間と自律性

「全ての道はローマに通ず」
 真理への道とは、試行錯誤しながら多くの方法がある。決して真理への経路はひとつでない。全ての道をローマへ通じさせ、西洋文明はローマ帝国に集約された。一冊の聖書が固定点となり、その表現は、建築や絵画、音楽へと派生していく。都市文明は、キリストという一神教の固定点を要求する。これが、都市生活での不安を解消する根源となる絶対神である。マックス・ウェーバー著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などからも理解できるように、都市イデオロギーや消費志向はアメリカ合衆国の都市文明と現在の金融崩壊を体現している。
ボストン市役所

「生老病死」
 一方で、インド、中国、日本などの東洋文明は未だに自然宗教である。釈迦は城都に出生したが、若くして城郭を出たのちに、老人に出会い、病人に出会い、死人に出会い、菩提樹の下で「生老病死」を悟った。都市から出て、田舎の自然との「折り合い」のなかで、都市文明に足りない部分を補ったといえる。自然を相手にして「絶えず手を入れる」ことで、簡単に折れない自律性や安定性、習慣性を保っていくことができる。たとえば、般若心経を毎日唱える、決まった時間に山林を散歩して新鮮な空気を吸う、忙しくても頭を空っぽにする時間をつくる。習慣の力によって自己肯定感を強めていくことができるのである。
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 西洋文明は人間と自然を対立させて都市イデオロギーを創造したが、東洋文明は人間と自然に境界線を引かずに持続可能な空間のなかで自律性を高めてきた。

 ところで、持続の習慣、規則的生活リズム、徹底的なルーティンワークなど、持続可能空間によって偉業を成し遂げているのがイチロー選手である。睡眠時間は7時間、球場に入るのは5時間前、朝ご飯はカレーライス、これを同じ安定した状態で毎日行い、自分の行動を「習慣化」している。また、グローブやバッドの「手入れ」は毎日怠らない。さらに、オリックス時代に仰木監督より「鈴木一朗」から「イチロー」への登録名を頂いた。イチローは仰木監督との「ご縁」を大切にし、ソファーの横には仰木監督の写真が立てかけてある。イチローの実力であれば低迷するマリナーズでなくとも、強い球団にいつでも移籍できるはずである。しかし、イチローのアイデンティティは「消費志向」や「資本性」ではなく、マリナーズとの「ご縁」や「連続性」「持続性」「長い手入れ」が基盤になっている。持続する深い関係性こそが、強いアイデンティティを築いていくのだろう。 

アヒル

山下裕史

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2009/09/29 00:00 | 未分類comment(0)trackback(0)  | top

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