事理弁識能力

 成年後見制度は民法第七条に以下のように定められています。 看板1

 『精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。』

 「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」がこの制度の後見類型の対象者となるのですが、「事理を弁識する能力を欠く」とはどんな状態か。「事理」は国語辞典によれば、物事の道理、すじみち、ですが、仏教用語としての意味もあります。
 法律用語としての「事理を弁識する能力」とは、「後見等の事務に係る法律行為(例えば、介護の契約看板2 など)が自己にとって利益か不利益かを判断する能力」とされています(小林・大門他, 2000, p.72)。これが判断能力です。

 よく似た概念に「意思能力」があります。「自己の行為の結果を判断することができる能力であって、正常な認識力と予期力を含む」とされています(テキスト, p.156)。自己の行為の結果看板3を判断することから、行為の内容によって求められる能力は異なります。不動産管理と年金管理、こづかい管理とは異なりますし、婚姻や遺言(遺言は15歳!からできる。民法961条)なども異なります。
 ただ、意思能力をほぼ判断能力と同様にとらえる考え方もあり、法律の周辺にいる者にとっては少々分かりにくいところです。

 成年後見制度は事理弁識能力=判断能力による後見、保佐、補助の3類型で、その有無は個別の(法律)行為により区別しません。意思能力とは別の概念です。制度の立法者はそう考えていたそうです。
 「事理弁識能力を欠く」とされたとしても「意思能力」があるという場合もあります。成年後見人の取消権の対象から「日用品の購入その他日常生活に関する行為」が除外されているのも、例え一時的にせよ意思能力があると認められるからです。

 広告事理弁識能力を欠くとされ、代理権や取消権が行使されると本人保護にとっては必要な局面は確かにありますが、一方、結果として本人の意思決定や意思能力が制限されるとも見えます。選挙権は改正されましたが、資格制限問題の一端もそこにあると思われます。
 意思決定の支援がテーマとなるなかで、成年後見制度にとっての課題のひとつです。
 以下の著書を参考、引用しました。

 小林昭彦・大門匡(編著)岩井伸晃・福本修也・原司・岡田申太(著)(2000) 成年後見制度の解説 財団法人金曜財政事情研究会
新井誠・赤沼康弘・大貫正男(編)(2014) 成年後見制度第2版 有斐閣

 写真は本文とまったく関係のない看板コレクション、一部は壁画?いずれもアイルランド。    (ホンダタカシ)

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2015/05/06 21:38 | 未分類trackback(0)  | top

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