共感性をめぐって

 現在、調べていることや考えていることを書くことが増えてきました。ここに書きちらしたことをまとめて論文などにするのですMilano_2015111919051514a.jpg が、現在進行形の途中経過をおみせするので断片的になりがちです。ご容赦ください。

 過去にもここでふれたことがありましたが、再び共感性についてです。ここでいうのは性犯罪者の被害者に対する加害者の持つ共感についてです。

 考えれば、共感性が高ければそもそも加害行為は抑制されるだろうし、被害者への共感性が高めれば加害の再発も抑制されるはずです。ところが、研究結果は必ずしもそうとは言いきれないようです。
 今読んでいるMarshall & Marshall (2014, p.182)では、「被害者に特定した共感は犯罪誘発する要因ではない」とされています。また、共感性について大学生と少年院の少年とを比較した日本の研究では、後者の方が高いという結果でした(奥平他, 2005)。だからといって、共感を軽視するわけには行きません。被害者を共感的に理解することは加害者の責任でもあるからです。

 Marshall & Marshall (2014, p.181)では、共感性は以下の4つのプロセスがあるとしています。

1.だれかの感情状態に対する認識
2.その人のものの見方を取り入れ理解することができる能力
3.その人の感情状態に対して情緒的な反応をすること
4.その人の苦痛を改善しようとする試み

 このなかで、1.他者の感情の認識、2.他者のものの見方を取り入れ理解する、二つが難しいのではないかと考えています。
 1.は、怒っている、悲しんでいるなど相手の感情に気づくことです。言葉だけじゃなく、表情や態度、声の調子など推測しますね。感情に対する認知は、自己の状態をモニタリングするという点からも治療では重要ポイントのひとつです。
 2.は(他者)視点取得ともいい、相手のものの見方や感じ方が分かることです。この人だったらこう考え、こう思うだろうなという推測です。よく知っている人だけじゃなく、始めてあった人に対しても。

 この二つがうまくいかないことと共感性との関係についてさらに考えます。
カバー
(文献)
Marshall, L. E., & Marshall, W. L.  (2014)  Self-Esteem, Empathy, and Relationship Skills Training. In M. S. Carich & S. E. Mussack(Eds.) Handbook of sexual abuser assessment and treatment. The SafereSociety Press.
奥平裕美・木村正孝・古曵牧人・高橋哲・栗栖素子・徳山孝之・井部文哉(2005) 共感性と他者意識 中央研究所紀要第15号 pp.203-217.   矯正協会

閑話休題。ようやく本ができ上がりました。旧版に比べて、かなりポップな表紙になりました。全体の組み立てや内容もかなり変わりました。原著を入手してから2年弱かかりました。

 最も大きな変更点は、性犯罪者治療の新しい潮流であるグッド・ライブス・モデルに通じる「いままでの私/あたらしい私」モデルが取り入れたことです。
 「いままでの私」とはプログラムを受ける対象者(以下、対象者と呼ぶ)を 問題行動のハイリスク状況に引きずり込もうとする悪い思考や行動、あるいは改善のない停滞であり、問題行動の再発をもたらします。
 一方、「あたらしい私」は、問題行動をせず健康で安心した生活へと導く良い思考や行動です。認知-行動的アプローチでいえば、「いままでの私/あたらしい私」モデルは認知であり思考であって、知的・発達障害者の認知レベルに合わせた認知再構成ともいえるものです。それにとどまらず、このモデルでは対象者のストレングスに着目し、責任や率直さなどいくつかの価値観をもとに、健康的で安全な生活の創造をめざします。

 きっかけ、危険ゾーン、犯罪サイクルなどのリラプス・プリベンションによるリスクの回避スキルは重要なのでそのままです。他にも改善点はいくつかあります。

 従来の実績ある有効な手法をもとにあたらしい考え方を取り入れた「性問題行動のある知的障害者のための16ステップ 『フットプリント』心理教育ワークブック 第2版」(明石書店)を、どうぞよろしくお願いいたします。   (ホンダタカシ)

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2015/11/20 10:30 | 未分類trackback(0)  | top

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