老人の悪弊

  よしあしの中を流れて清水哉(かな)  仙厓

 葦の茎が折り重なるように茂るあいだを清水が流れる図に添えられた句。水辺に生える「葦」は「あし」とも「よし」とも読む。それを「悪(あ)し」「良し」に引っかけて、善と悪が複雑に入り混じる世間、清がすぐ濁に染まり、裏返る世間のはざまを、清きままに生きることの険しさと尊さを詠む。
(朝日新聞 2016・4・23 「折々のことば」鷲田清一 №378 )

  久しぶりに仙厓和尚のこの記事が眼にとまった。和尚は、江戸後期、88歳まで超長寿を全うした博多の禅僧で面白い句を詠んでいる。6つのうちひとつを省略して紹介する。

  しわが寄る ほくろができる 腰まがる 頭がはげる ひげ白うなる
  手はふるえ 足はよろめく 歯はぬける 耳は聞こえず 目はうすくなる
  聞きたがる 死にともながる さびしがる 心は曲がる 欲深くなる
  くどくなる 気短かになる 愚痴になる でしゃばりたがる 世話焼きたがる
  またしても 同じ話に 子をほめたがる 達者自慢に 人はいやがる
  (老人六歌仙)

  いやまあ、見事に自分のことも自虐的に言ってのけたものである。老人というのは江戸の昔から今もってあまり変わっていないことに驚きをおぼえる。最後の行などは(「孫をほめたがる」「病気談義」に置き換えても)思い当たる人も多いはず。
                                                                     (明石隆行)

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2016/04/25 06:47 | 未分類trackback(0)  | top

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