人は自分や他人、それらを含む社会をどのように見ているか。

 性加害行動を考える時、その原因や維持される要因には加害者の思考のタイプが大きな役割を果たCognitive Science and していると言われています。思考のタイプ(考えかたエラー)は、否認=誘われたからやっただけのこと、最小化=加害はたいしたことはない、など認知の歪みとして指導プログラ ムに取り入れられています。

 認知の歪みの大部分は、いわば言い訳めいたもので表層的な認知か加害に対する加害者の自己報告でしかないもの。事後の説明かもしれず、深い認知(スキームと呼ばれることもある)の構造やそのプロセスを反映したものではないという批判があります。

 「自分や他人、それらを含む社会をどのように見ているか」を社会的認知といいます。見ているとは、知覚している、認識している、理解している等という意味に近いものです。加害者の社会的認知のプロセスを明らかにすることで性加害に接近しようとする試みです。従来なら社会心理学、今は認知心理学の対象分野です。以下の論文タイトルは、「認知科学手法を用いて性強制(暴力)行動における社会情報処理の役割をアセスメントする(仮訳)」

Treat, T. A.,猫1  McFall, R. M., Viken,R. J., & Kruschke, J. K.(2001). Using Cognitive Science Methods to Assess the Role of Social Information Processing in Sexually Coercive Behavior. Psychological Assessment, 13(4), 549-565.
 社会的認知のモデルのひとつ、「社会情報処理理論」は自分と他者、他者同士の相互作用にどのように処理し反応するか、それに枠組みを提供しようとします。このモデルでは認知のプロセスを3段階に分けます。「解読段階 decoding stage」は入ってくる刺激情報を知覚し、組織化し、解釈する段階。「意思決定段階decision-making stage」は反応を選択する段階。「実行段階enactment stage」は選択した反応を実行する段階。この段階のどこかに困難や問題が生じた結果、性加害行動につながると考えます。
 
 これらの段階で特に注目されるのは「解読段階」です。解読というの訳語ではもうひとつピンときませ猫2んが、自分がカーッとなったとか相手がけわしい表情になったということを知覚=感じてまたは見てわかり、これまでのいきさつや周囲の状況を組織化=考慮にいれて、怒ったとかイラついていると解釈=理解する、というプロセスです。
 自分がカーッとなったことや相手の表情変化に気づかない、これまでのいきさつや周囲の状況に無頓着、カーッときたのはノッテる証拠などとどこかで誤ったプロセスに入ったのではないか、というプロセスが加害行動に結びついていると考えます。

 このモデルは、私たちが「性暴力被害とわたしの被害者を理解するワーク」(本多・伊庭(2016). 性問題行動のある知的・発達障害児者の大和文華館 支援ガイドー性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック 明石書店)でお示ししたものとほぼ同じです。加害者が被害者の様子を正しく知覚し解釈し、被害者に対して共感的に理解するという手順をプログラムにしています。全く別の非行の文献を参考に考えたものです。

 この論文では、それを実験によって統計手法を駆使して証明しようとします。実は読んだのはそこまで。読み進んだら、またご紹介します。
万歳
 閑話休題。右の印は鉄斎筆による「万歳」、書画同様に力強くてひょうひょうとした印象です。なまこ壁が印象的な大和文華館http://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/index.htmlのお土産品、ミューズイアム・グッズです。門から美術館に向かう手入れの行き届いた雑木林がみごとです。近くにある中野美術館http://www.nakano-museum.ecweb.jp/(9月まで休館中)にも是非。      (ホンダタカシ)



 
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2016/08/04 18:00 | 未分類trackback(0)  | top

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