”Love in Infant Monkeys"

 論文、レポート、講演などタイトルを付ける機会はたくさんありますが、自分の書いた文章にタイトルを付けるのは結構難しいものです。このブログにつけた自分のタイトルも4論文あまりのセンスのなさにあぜんとします。

 心理学の授業のために、1950年代末から60年始めにかけての教科書に載るような有名な論文をいくつかインターネット経由で購入しました。それらの論文のタイトルは、簡潔で読む気にさせ、明解にして野心的です。

 Hessのインプリンティング/刻印づけ/刷り込みを実験によって実証した論文は「"Imprinting" in Animals 動物におけるインプリンティング」とストレートなタイトルです。タイトルの下(リード)には以下のような簡潔なインプリンティングの説明があります。

鴨の子が生まれ、その子が最初に見た動くものは通常自分の母親である。その子は母親の後をついていく。動くものが別のものであっても、代わりに後ろをついて行く。
玩具の鴨を使った実験装置の有名な写真がその1頁を飾っています。
  Hess, E. H.(1958). “Imprinting” in Animals. Scientific American. Vol. 198, 81-90.

 乳児の視覚を対象としたFantzの論文は、1961年は「 The Origin of Form Perception 形態知覚の起源」と野心的でゾクッとします。ところが、Keith4.jpg1963年になると「Pattern Vision in Newborn Infants 新生児のパターン知覚」と精緻ですが魅力が・・・。1961年のリードにはテーマが端的に書かれています。
人のものの形の知覚能力は生まれつきなのか、それとも後天的に学習されたものか?それは実験では生得的であるとされた。でも成熟と学習は知覚能力の発達に重要だ。
 Fantzの論文に登場するのは、生後48時間!から6カ月の赤ちゃんです。これ自体が驚きです。赤ちゃんは人の顔に吸いよせられます。
 Fantz, R. L. (1961). The Origin of Form Perception. Scientific American. Vol.204, 66-72.
 Fantz, R. L. (1963). Pattern vision in newborn infants. Science, Vol.140, No.3564, 296-297.

 なんといってもHalowの論文タイトルはすごい。「Love in Infant Monkeys 赤ちゃん猿の愛」生まれてすぐに親から離された赤ちゃん猿を対象にしています。針金製の人工”母親”とやわらかい布製の人工”母親”に対する赤ちゃん猿の行動が観察されます。どちらの”母親”を好むのか。
生まれたての子どもの感情は食事の満足によるものと長らく考えられてきた。幼いアカゲザルの子どもによる研究では、愛は身体を密着させることから生まれることを示した。
 
  タイトルもリードは大変良くできています。成果をストレートに表現し、読み手Keith1.jpgがその先は、と催促しそうです。お乳が出ても出なくても、赤ちゃん猿は肌ざわりの良い布製の”母親”のもとを離れません。成果をストレートに表現し、読み手がその先は、と催促しそうです。なにしろこのタイトルには愛があります。
 Halow,H.F. (1959).  Love in infant monkeys. Scientific American. Vol.200, 68-74.

 閑話休題。
 中村キースへリング美術館http://www.nakamura-haring.com/exhibition/index.htmlへ行きました。キース・ヘリングだけの個人美術館です。JKeith3.jpg R中央線小淵沢駅でおりタクシー、バスで10分くらいのところにあります。
 都会の芸術家と思っていましたが、高原の林にある美術館の建物自身がキース・ヘリングの線を増幅し、ポップな線を繊細に見せます。一部を除き写真撮影もOK。(アートは誰のもの?) 
 先にご紹介した熊谷守一もキース・ヘリングも太い線に目がとまります。かたどるための輪郭線を超えて、熊谷守一の線は自信に満ちたクロッキーのようでもあり、、キース・ヘリングのそれは自分と社会の境目を意識した線、のように思えます。
 最近の美術館につきもののミューズイアム・ショップは、ここではpop shopと呼びます。赤ちゃんのロンパースまで売っています。美術館全体がポップです。    (ホンダタカシ)

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2016/09/28 09:05 | 未分類trackback(0)  | top

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