「十代の脳の謎」

IMG_1735.jpg  前回のテーマとした法務省の勉強会資料のひとつ、八木先生の「青年期の発達と若年受刑者の実態:精神医学的観点から」に引用されていた論文を入手したので簡単にご紹介します。
   J. N. ギード「10代の脳の謎 The Amazing Teen Brain」日経サイエンス2016年3月号 pp.37-42。この雑誌は必要な論文記事だけをPDFとして購入できるので便利です。

 10代の脳は、それまでの子どもの脳が老いたものでもなく、かといって大人の脳の未完成品(生煮え版!とのたとえ)でもない。10代の脳はサイズが大きくなることで成熟するのではない。脳には言語、視知覚、感情、実行機能などさまざま機能をもつ領域がありますが、異なる領域どうしがより多く接続され、各領域がより専門化することによって成熟します。脳内のネットワークのつながりが変化し、脳領域間の接続が増加し強化されるというのです。10歳過ぎから30歳頃にかけて成熟します。

 脳の各領域は足なみをそろえて成熟するのではないようです。感情や動機づけに強い関連を大脳辺縁系は10代前半の思春期に急激に発達します。大脳辺縁系は海馬、扁桃体などのいくつかの領域からなり、脳の内部にあります。
 一方、組織化や意思決定、計画、感情の制御能勢2など実行機能と言われる機能に関連している前頭前皮質は、大脳辺縁系より10年ほど遅れて成熟します。感情をつかさどる大脳辺縁系と衝動的行動を制御する前頭前皮質の成熟に時間的なズレがあることです。感情や衝動のアクセル役とブレーキ役の領域の成熟にミスマッチがあるので、10代の若者は子どもや大人に比べて危険な(感情的な)行動を取りやすいと言えるそうです。

 環境に合わせて脳の領域間のネットワークを変更してさまざまな行動がとれるという柔軟性、可塑性は10代の特権ですが、一方でそれがあだとなる脆弱性も潜んでいます。振れ幅の大きさこそが10代なのかもしれません。「10代の若者は自身のアイデンティティーを作り上げるすばらしいチャンスを手にしている。自らの選択に従って自らの脳を最適化しているのだ」と論文は結んでいます。   (ホンダタカシ)

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2017/10/13 11:24 | 未分類trackback(0)  | top

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