グラウンディング・テクニック

観覧車  米国物質乱用・精神保健サービス局の「治療改善実施要領:行動面の健康におけるトラウマ・インフォームド・ケア:57のヒント」(仮訳) の第4章に、「グラウンディング・テクニック」が紹介されています。

 虐待などつらかった不快な体験(逆境体験、トラウマ体験)によるさまざまな影響や障害などをスクリーニング、あるいはアセスメントする際に、調査対象となった人(クライエント)が思い起こした記憶やその時の強い感情に圧倒され、混乱することがあります。面接している時にも起こることがあります。そうした時に面接者がクライエントに行う対処方法の一つが「グラウンディング・テクニック」です。

 (過去の)トラウマに関連して混乱したり解離などが起こったのであれば、対象となる人(クライエント)に「いま、ここ」を強く意識させ、現実感とその感情を確認させる必要があります。それは、あたかも映画館の中で心の映画を見ているようなものといえます。そうであれば、映画館を出て陽のさす場所=現在の環境の中へへ出よう、という比喩で説明します。同時に、ここは安全で安心できる場所であることも必ず説明します。

 自分の位置かにを確認し自分を取り戻すエクササイズとして行われるのは、例えば、

  ・壁にかかっているものを言う・赤いものの名前を言う
  ・今日の日付・最近の出来事を言う
  ・こぶしを握って感情のエネルギーをそこに移し替える
  ・鼻から吸って口から吐き出す深呼吸  など。
 グラウンディングgroudingは「自分を見失わないこと」(ルミナス英和辞典 研究社)とあり、地に足をつけて自分=現実を見失わないこととの意味ですが、訳しにくいので安直ですがカタカナ読みのままです。
 逆境を体験した人と関わる支援者や面接者には身についておくべき基本的な技法です。
 
A TREATMENT IMPROVEMENT PROTOCOL Trauma-Informed Care in Behavioral Health Services TIP 57(2014). Substance Abuse and Mental Health Services Administration Center for Substance Abuse Treatment (U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES). p.98. Retrieved from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK207201/ (May 14, 2017)
きむら
【参考】Melnick, S. M., & Ellen L. Bassuk, E. L.(2000). Identifying and Responding to Domestic Violence Among Poor  and Homeless Women.  A collaboration of the Better Homes Fund, HCH Clinicians’ Network Research Committee (National Health Care for the Homeless Council). p.8. Retrieved from https://www.nhchc.org/wp-content/uploads/2012/02/IdentifyingRespondingtoDomesticViolence_2000.pdf (May 14, 2017)

 さて。
 自伝を書くほどの歳でもないだろうと思ったけれど、「木村充輝自伝ー憂歌団の僕、いまのぼくー」(K&Bパブリッシャ−ズ)を図書館で借りました。憂歌団のほとんどの曲がそうであるように、大阪弁をブルースにのせること、たとえ外国の歌であっても日本語で歌うこと、その軌跡が自伝の形で語られます。もちろん、それだけではありませんが。憂歌団という名前だってブルース・バンドの日本語訳。   (ホンダタカシ)

2017/05/14 10:07 | 未分類trackback(0)  | top

ある日。 セルフビルド

 ある日。セルフビルド
 と、武田百合子の文をまねてはみましたが、うまくいすはずもありません。京阪電車のなかで眠くなるまでずうっと読んでいます。

 ある日、買ったのはこの本です。
 石山修武(文)・中里和人(写真)「セルフビルドの世界:家やまちは自分で作る」ちくま文庫

 この本は写真に圧倒されます。表紙の家はカンボジアのトレンサップ湖に浮かぶ家です。船にあたる部分は買ってきて、上にのる家は自分で作るそうです。仕事は漁師。
 鉄製の巨大なドラム缶を横に転がしたような川合邸。参考として、http://www.acetate-ed.net/bookdata/008/008.html。建てられた川合さんは、建築は立っているから倒れるんで、初めから寝ていたら倒れない、とか、動物や昆虫が自分の住みかを作るように人間も家は自分でつくるべきだ、と本の中でおってしゃっています。なるほど、確かにそうだ。他にも、車の上に立つ2階建てのモバイルハウスとか、一関の超有名ジャズ喫茶「べイシー」http://www.liveatbasie.jp/about/index.htmlまでもが紹介されています。

  セルフ自給自邸ビルドとは自分で自宅を建てる、との意味ですが、そうでないものも多く載っています。生活(術)は自己表現であって、モノを作ることと同じである、という考えからこの本は作られています。建てた人のセルフ、構想した人のセルフ、住んでいる人のセルフに比重が感じられる本です。

  この本を読んでいると、セルフビルドの本を持っていることを思い出しました。この本は美しくレイアウトされた写真を中心に構成されています。
 「自給自邸:セルフビルド魂万歳」INAX BOOKLET
  
 陶芸、彫刻、写真、ギャラリーなどに携わる方々がビルドした自宅が紹介されています。いずれも自然が感じられる環境にほどよくデザインされた外観や内装が目を引きます。家は買う物、消費するモノではなく、自分で作って生活するもの、あるいは生活すること。

 苦労もあったでしょうけれど、こんな面白いことを人の手に渡すのはもったいないとの気持ちが伝わります。確かにそうです。セルフビルドは言うに及ばす、より身近な自作やハンドメイドでできあがったものには市販品を上まわる快適さがあります。作った人の身の丈にあっているからです。

 日記は身の丈そのものです。ここには日付がありませんが。
武田百合子  武田百合子「日日雑記」 武田百合子全作品7 中央公論社

 天神橋の古書店で買ったこの本はほぼ新書版の大きさで、活字と余白のバランスが好ましく美しく見えます。この日記はなにげなく始まり、鉄棒選手のように思いもよらないかたちで着地します。
  例えば、「代々木公園、朝七時。」と始まるある日は、黄色のシャツに白ズボンの男の発声練習をはさみながら、走る人、散歩する人、ベンチの人などがあらわれ、持ってきた残りもののギョーザをカラスにやると、それをくわえて飛んでいくさまが可愛いく感じられて、
 

「両端がそり返ったギョーザの三日月形とカラスの半開きの嘴と青空の組み合わせがよかったのだ。そうでもなければ、カラスときたら、全くいつだって無表情なんだから。」
と終わります。赤瀬川源平のあとがきの題は「ナマコをはじめて食べた人間が書いたような文章」です。なるほど。     (ホンダタカシ)

2017/04/28 21:16 | 未分類trackback(0)  | top

子ども時代のトラウマが成人期の健康を悪化させる

 米国疾病対策センター Centers for Disease Control and Prevention(CDC)のACEで乗り物3 は、児童虐待と成人期の健康や幸せ感well-beingの関連を対象としたCDC-Kaiser ACE(児童期逆境体験)研究をしています。
https://www.cdc.gov/violenceprevention/acestudy/about.html 被虐待など児童期逆境体験が成人期でどのような影響を及ぼすのかがテーマです。
 そうした研究のひとつ、「成人期での死に至る多数の主要因に対する児童虐待および家庭機能不全の関係:児童期逆境体験(ACE)研究」(1998)の概略をご紹介します。

 この研究では、児童期逆境体験の質問項目は虐待と家族機能不全との分けられます。虐待は心理的、身体的、性的の3カテゴリーからなります。家族機能不全は、母親への暴力(の目撃)、同居している家族の誰かが物質乱用である、家族の誰かに精神疾患か自殺企図がある、家族の誰かに収監歴/犯罪歴がある、の4カテゴリーからなります。いずれもいわゆるネグレクトに通じます。各カテゴリーは2から4つの質問項目から構成されます。

乗り物2  調査対象者が児童期での体験したカテゴリーと成人期の健康状態や疾患の状態の関係が、9,508人対象に調査されました(回答率70.5%)。

 その結果、驚くべきことに回答者の半数以上が1つのカテゴリーを体験し、Ⅰ/4は2つ以上であったようです。
 そのうえ、4つまたはそれ以上の児童期暴露カテイゴリーを経験した人と全く経験していない人と比較すると、アルコール問題、薬物乱用、抑うつ感、喫煙、肥満などの健康リスクの率は4倍から12倍へと悪化という結果でした。虚血性心疾患、がんなどの成人期特有の疾患とも関連しているようです。

 子ども時代にこうむった虐待体験の影響は、愛着関係、感情、対人関係など心理面ばかりに着目してきましたが、そこにとどまらず行動や身体状況にまで及ぶことが示されています。成人期になっても心に体にも影響があるのです。

 そのケアが急務であることは間違いないですが、その影響がこれほど広範囲に及ぶということから、虐待など児童期逆境体験については、領域を超えて最も広い意味での対人援助を実践するものにとって不可欠の知識ではないかと思います。

Felitti, V. J.,  Anda, R. F., Nordenberg, D., Williamson, D. F., Spitz, A. M., Edwards, V., Koss, M. P.,&  Marks, J. S.(1998).  Relationship of Childhood Abuse and Household Dysfunction to Many of the Leading Causes of Death in Adults   The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study.  American Journal of Preventive Medicine. Vol. 14, pp. 245–258.
博物館

 チェスケー・さてブジェヨビッェのトロリーバスとチェコ国鉄の車両の写真ですが、本文とは無関係です。子どもの頃、京都にも四条大宮あたりでトロリーバスが走っていたことを思い出します。
 プラハにある国立技術博物館 http://www.ntm.cz/enはチェコの工業製品などを展示しています。なかでも乗り物が群を抜いています。吹き抜けの4階建ての展示場に、自動車、飛行機、気球、蒸気機関車、モーターサイクル、自転車などが美しく磨かれてならんでいます。横から見たり斜めからのぞき込んだり、飽きることはありません。博物館を堪能したら、前のレトナ公園で市街地を眺めながら名物のビールを飲んで一休み。      (ホンダタカシ)

2017/04/14 19:08 | 未分類trackback(0)  | top

児童期逆境体験国際版調査票(仮訳)その2

 前回ご紹介したWHO版のAdverse Childhood Experiences International Questionnaire  (ACE-IQ) のタイトルを少し変えました。その内容を、今風に言えば、ざっくりご紹介しますhttp://www.who.int/violence_injury_prevention/violence/activities/adverse_childhood_experiences/en/

 WHO版のACE_IQは、CDC版(米国疾病対策センターthe Centers for Disease Control and Prevention)とはずいぶん違います。
 CDC版は10問ですが、WHO版ACE_IQは43問でかなりたくさんあります。テーマなどを整理すると以下の表のようになります。

テーマ内   容質問数  
属性年齢、性別、職業、生活形態など7
婚姻初婚年齢、配偶者を自分で選択したかなど5
両親/後見人等との関係回答者への関心の度合い、回答者の悩みの理解など5
家族環境養育者や家族の状態(薬物、収監など)、虐待の有無(心理的、身体的、性的、ネグレクト)、家庭内暴力の目撃16
友人間の暴力いじめの有無、ひどいケンカの有無、3
地域での暴力事件の目撃地域社会での暴力の被害者の目撃3
戦争/集団暴力への暴露戦争、紛争、集団暴力により強制移動させられたり、自宅の破壊、暴力被害など
オブジェ1
  子ども時代の逆境体験では身体的・心理的・性的虐待やネグレクトなど虐待が真っ先にあげられますが、暴力的な場面を目撃したり、銃声や叫び声など聞いたりした体験も含まれます。
 WHO版ACE_IQ では地域社会で目撃した暴力事件に関する質問、戦争/集団暴力による被害体験、さらにいじめに関する質問もあります。なお、CDC版ACEには属性や婚姻というテーマはありません。
  
 回答は質問によって異なり、はい(ある)/いいえ(ない)で答える質問、または頻度として、しばしばあった/数回あった/1回あった/全くない、を答える質問があります。全ての質問に対する回答には「答えたくない」が必ず用意されています。

 紛争が顕在化している社会とそうでない社会、また状況やその経過は社会によって異なることを考えれば、こうした質問が必要であると理解できます。統一された質問や手順によることで、地域をこえた比較が可能となります。
 一方、日本の知的障害者を対象にした実施を考オブジェ2えればそう簡単なことではないように思えます。分かりやすい質問文や同意書、実施計画など課題はたくさんあります。

 写真はチェスキー・クルムロフの街にあったオブジェだったような(記憶によれば)。
 プラハのスメタナ・ホール(市民会館)と聖サルヴァトール教会で音楽を聞きました。どちらも大変響きがきれいで音の粒立ちが感動的です。とりわけ、バロック建築の聖サルヴァトール教会とそのパイプオルガンも17世紀には完成した、とあります。見あげるほど高いところから、歌、トランペット、パイプオルガンが奏でられ、広い教会の内部を柔らかな響きで満たします。残響が長く音が美しく重なりあっていきます。比較するほうがおかしいのですが、うちのステレオ装置は全くだめです。          (ホンダタカシ)
 

2017/03/31 08:55 | 未分類trackback(0)  | top

児童期逆境体験アンケート国際版(仮訳)/プラハのトラム

 児童期逆境体験の調査は米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)のものhttps://www.cdc.gov/violenceprevention/acestudy/が知られていますが、WHO世界保健機能のWHO.jpg「児童期逆境体験アンケート国際版(仮訳)Adverse Childhood Experiences International Questionnaire(ACE_IQ)http://www.who.int/violence_injury_prevention/violence/activities/adverse_childhood_experiences/en/はさまざまな国や地域を対象にしたものです。

 ここでは、以下のように定義されています。日本の虐待の定義よりも広い。
児童期逆境体験ACEは、子どもが早期に受けるストレスの源で、最大の強度で高頻度で起こるものをさす。その体験はあらゆるタイプの虐待、ネグレクト、夫婦間や養育者間の暴力、アルコールや物質(禁止薬物)乱用、仲間同士や地域など集団の暴力などである。

 WHOの問題意識は以下です。
子ども時代の相当程度の長期的なストレスは健康や幸せに対して生涯にわたって影響があることが明らかになった。初期の脳発達を妨害し、神経系や免疫系を機能を損傷する可能性がある。また、児童期逆境体験に直面した人がとった行動から、こうしたストレスによってアルコール問題、抑うつ、摂食障害、安全さを欠く性、HIV/AIDS、心疾患、がん、他の慢性疾患など重大な問題がもたれされることがある。

 つまり、児童期逆境体験は心理面はいうまでもありませんが、身体的な健康にまで強く影響すると説いています。したがって、ACE_IQは健康調査の一環として実施されるものとしています。PTSD症状までをも対象にしたチェックリストは別に標準化されたものがあります。
 WHOのこのサイトには、質問紙の他に質問者の面接のためのガイドライン、調査後の処理方法、Q&Aなどがあります。面接のガイドライントラム1は初心者向けに見えますが、かなりていねいで役立つものです。いずれご紹介します。


 チェコ共和国のプラハなどへ行きました。プラハは塔とビールで有名ですが、目を引くのはトラムです。前面が丸みを帯びた車体はクリーム色と朱色のツートンカラーのやや古風なデザインです。26系統もあるトラムは終日運転され市内の移動手段の中心です(DPP/The Prague Public Transit Co. Inc.プラハ交通局?の路線図http://www.dpp.cz/en/transport-around-prague/transit-schematics/トラム2。路面電車とは思えないスピード走行で、ペアピンカーブもがんがん行きます。日本では見かけない2両連結や新型車両のラッピング車両も。輪のないつり革につかまっていてもよろけることもあってか、それともよほどの高齢に見えたのかよく席を譲られました。でも、高齢と思える旅行者に自分が席を譲ったことがあるか考えると少々恥ずかしくなりました。
      (ホンダタカシ)

2017/03/17 10:11 | 未分類trackback(0)  | top